ミテキタ

昨日は休日

 

映画館へ行ってきた。

感想はシンプルに。

「みておいてよかった」だ。

 

さてさて

ストーリー終盤で或る歌が流れた。

え?これは何?(違和感)

わたしの知ってる歌だけど

誰の、なんていう曲だった?

なかなか思い出せない(苦)

 

テーマ曲はウタダってことは知っていた。

でもこれは何?(二度目)

なぜこんな歌がここで使われているんだ?

歌っているひとは?

もとの歌い手でないことは確か。それだけはわかる。

いや、それはこの際別に誰だってかまわないんだ。

思い出せない。

エンドロールには出るはずだけど

それまで待つなんてわたしには自分が許せない。

 

「なんでだよ!父さん!なんでこの曲なんだよ!

僕にはわからないよ!」

シンジなら叫んだだろう。

 

 

 

そしてなんとか曲が終わるまでに気が付いた。

・・・ユーミンじゃないか。

タイトルはついに最後まで思い出せなかった。

 

 

“VOYAGER”

 

映画館を出て、帰り道、自分を恥じた。

 

 

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わたしの好きな鉄塔。

その極みともいえるアレ。しかも赤。

美しかったなあ、ほんとうに。

アレだけをみるためにもう一度いきたいくらい。

 

ロンロンママ

ああ、疲れた~

勤務時間ギリギリいっぱいよく働いた・・・

 

 

今朝、開いた新聞に小さく訃報記事。

イラストレーターの西村玲子さんが1月に亡くなっていた。

つい最近までМ新聞にイラスト入りのエッセイコーナーもあり

下着メーカーのちいさなカタログ誌でも見かけたし

 

人はいつか死ぬ。それは仕方のないこと。

だけどやはり淋しく悲しいね。

 

また昔話になるけれど

10代はじめのころ、“私の部屋”という雑誌があった。

とても好きで毎号買っていた。

いまならだれでも知っていてネットでも手に入る

北欧の家具や雑貨もこの本で知った。

その本で西村玲子さんのことも知った。

 

“ロンロンママ”という

姿は人間だけど顔だけはネコというロンロンママの漫画。

今でいうならゆるい画風。

他にもファッションや暮らし方のエッセイも好きだった。

繊細でふわーっとした、センスのいい言葉とイラスト。

それに登場するような線の細いおしゃれで素敵な大人の女性に

なりたいなあ、とわたしはいつも思っていた。

 

ありがとう、西村玲子さん。

わたしはこんな大人になってしまったけど

あなたの絵や文章にとても感謝しています。

 

 

・・・・・・

 

昨日は

録画していた“プロフェッショナル仕事の〇〇”をみて

これもまた打ちのめされた。

自分がなぜあのアニメにいつまでも執着して

離れずにいるのか、その理由がわかった気がした。

「欠けているから」

 

そうなんだ。

 

スケジュールが珍しく詰まっている。こんな時に限って。

いつ、あれをみにいこうか。

(実は昨日までためらっていた。怖い気もして)

無題

https://www.youtube.com/watch?v=9FwuUnKRZg0

 

 

原曲はピアノ主体で、

ドラムや弦も入っていますが

アコースティックギターのみで歌ってます。

 

ギターを弾いてくれたYくんは

先のロングインタビュー4にあるように

高校時代からなにかと一緒にやってきた友だち。

そういう意味で「かゆいところに手が届く」貴重なひとです。

わたしが

「これこれこんな感じでやりたいんだけど」

と言えばうんうん、と。

 

 

昨秋、いつかこの曲を歌いたいと言ったら

音源作ってくれました。

カラオケ音源ならお手軽なんですが

そうではなく、どこにもないもので歌いたかった。

 

彼のギターだけの音源(CD)に

わたしのちいさな安いミキサー(手のひらサイズ)と

これまた安物のマイク、

あとはPCとスマホと編集アプリを使って

ひとりでなんとか出来ました。

一番テマヒマかかってないのはわたしのボーカル・・・

 

彼の部屋で彼の機材を使ったら

もっといいものも出来たはず!

 

画像は

自宅の近所の河原で撮ったもの。

 

元気出していかないとねー

番外編

金子  いやあ、お疲れさまでした~

 

銀子  こちらこそありがとうございました・・・

 

金子  銀子さんのブログでは、ぽつりぽつり、としか語られないことが多いので

細かなところを聞きたかったんですが、どうでしたか?

 

銀子  なかなか真相、本音は秘めてますよね。自分でいうのもおかしいですが。映画の感想に限ったことではなく。何のために書いてるんだか~

 

金子  これもまた読者に「行間を読んでください」ということかな、と笑

 

銀子  わたしのブログを時折思い出してチェックしてくれるようなキトクな方々はそれが出来るひとだと思ってますからね。

でなきゃ、「なんだこれ?さっぱり何が言いたいかわからん!」って離れて行って当然です。

 

金子  最後の最後にやはり映画のことをもう少しだけお願いしたいんですが・・・

 

銀子  どうしてもベストテン、ですか笑

 

金子  いや、10作とはいいませんけど、もう少し。

 

銀子  インタビューのなかでタイトルを出したのは当然好きなものですけど、じゃあ、ざっくりとね。

まず、超が付く大作。誰でも知ってて、「ひこうき雲」にあたるものとしては・・・

ゴッドファーザー” “七人の侍

これは感想書けません。凄すぎて。ご容赦ください。

 

金子  ホラー、サスペンスはいかがですか?

 

銀子  うーん、“シャイニング”はまた別格クラスだし・・・

ベタですが“リング”かな。いまだに夜にはみられない笑 

ツボにはまるという言い方があるけど、“リング”はまさにわたしの恐怖のツボにはまってて、これを超えるのは出てこない。

あとは黒沢清の“キュア”とか、古いものだと“サスペリア

 

金子  泣けるもの、胸が痛い系は?

 

銀子  昔のだといろいろ。“二十四の瞳” “五番町夕霧楼”、しばらくみてないと遠ざかっていきますねえ。あとは “パーマネント野ばら” “泥の河”

ぼろぼろ泣いてしまうことはそうないけど、一番記憶に新しくて、映画館で恥ずかしいほど泣いてしまったのは“グラン・トリノ

 

語らない約束でしたが、“泥の河”だけちょっと。

小栗康平監督です。原作・宮本輝

出てくる風景がわたしが幼少期育った河口付近に似ていて、切ないです。

時代としてもそう。

舞台はほんとは大阪なんですけど、ロケ地は名古屋の中川運河

これは、マルセ太郎というひとが一人芝居を演じていたのをみて知りまして。すばらしかった!

余談ですが、登場する少女の名は銀子です。

 

金子  番外作ってよかったです笑 ところでラブストーリーはなぜか出ませんね?

 

銀子  はあ、あまり身を入れること、ないですねえ。いろいろつらい経験ばかりしてきますと「んなわけねーだろ」って激しく懐疑的になるからでしょう笑

参考までに、ラブストーリーの人気投票をながめてみても、まったくといっていいほどピンときません、というよりみていない。そういうジャンルだというだけでもうみる気もしないっていうわけで。

恋に破れて復讐するっていうのならみてるかも笑

どうしても、というなら“男と女”くらい。ハッピーな恋愛じゃないけど。アヌーク・エーメには憧れてました。

 

金子  いや、ホントに番外対談やってよかったです!これからも映画に限らず、ブログ更新してくださいね。

 

銀子  はい、こうやってお話しているうちにも「ああ、あの映画また観たいなあ」っていうのがいくつか思い浮かびました。

たしかに更新滞ってます。どうしてもボヤキが多くて、いざとなると「やっぱりやめとこう」ばっかりなんで・・・今後はそうならないような「これは書いとかなきゃ♪」となるハッピーな出来事や、これは、という映画に出あえますように。

 

遠い空から降ってくるっていう 

しあわせってやつが

あたいにわかるまで・・・

 

金子  あたい、ブログやめないわ 笑

 

銀子  プカプカ プカプカプカ 笑

 

ありがとうございました。

 

(おしまい)

 

 

 

ロングインタビュー  その10

——ついにこのインタビューも10となりましたね~

 

銀子  よくひっぱりました笑 

 

——今回は洋画で、銀子さんのお好きな作品で、小説がもとになっているもの、です。

 

銀子  長くなりそうな予感が笑 たぶん延々語るっていうのは最初で最後だと。

 

——覚悟はできておりますので、心置きなくどうぞ。

 

銀子  はい、今回は“スモーク”です。

原作ポール・オースター、監督ウェイン・ワン

ですが・・・映画が始まると「a film by  Wayne Wang and  Paul Auster」と。

つまり、原作者(作家)がシナリオを書き、のちにキャスティングにもかかわりを持った、という作品。二人で作った映画なんだ!ですね。

 

——そういうことは大変珍しいことなんですね。原作っていうのはどのような?

 

銀子  オースターがニューヨークタイムズに書いた短いクリスマスストーリーだったそうです。原題は「オーギー・レンのクリスマスストーリー」

新聞だと特集で1ページ。それを読んだ監督が感動したようですが、ちょっと引用しますと

 

『読み終わったときには僕はとても近しいひとから素晴らしいクリスマスプレゼントをもらったような(中略)僕は妻に尋ねた。「ポール・オースターって誰?」 』

 

そしてこれが映画になった時には、ストーリーも登場人物も膨らみ、元の小説はラスト数分で映像になり姿を見せます。

 

——その数分間の物語は小説に忠実なんですか?

 

銀子  そうです。これがラストに来るために二時間かけた映画があるというわけですね。

 

——タイトルが“スモーク” つまり煙ですね。

 

銀子  ブルックリンにあるタバコ屋、正確には“ブルックリン葉巻商会” 小さな店。そこを舞台にしてストーリーが始まる。店主はオーギー、演じたのはハーベイ・カイテル。もうね、大好きな俳優のひとりです、セクシーなんですよ~

 

——はあ、セクシー?ですか?失礼ながら若いわけでもスタイルがいいわけでも美形でもないですよね?まあ、銀子さんが好まれるのはそういう単に美しい男性じゃないことは知ってますが笑

 

銀子  “タクシードライバーからして妙な役でした笑 

ジョディ・フォスター演じた少女娼婦のポン引き。ランニングシャツなんか着てるヘンな男。名前がスポーツ・・・可笑しすぎます。

で、“ピアノレッスン”では裸体を披露?してますが、もう、素敵でしたね。人間というより動物って感じ笑

 

話がそれました・・・そのタバコ屋の客として登場し、オーギーと絡んでいくのが作家のポール。俳優はウィリアム・ハート

役としてはスランプ、というか妻を亡くして立ち直れずにいる作家。そのポールと知り合った少年ラシードとラシードの父親捜しの話が絡みます。

 

——作家で名前がポール?それは原作者と同じではないですか?

 

銀子  それはあまり関係ないみたいです。作家というとかっこよさそうに思えるけど、このポールは服装もヨレヨレで、鍵も壊れてるようなボロいアパート住まい。部屋も散らかってる・・わけですが、わたしはまたこのアパートがとても好きなんです!

奥が仕事部屋、ま四角じゃなくて、半円形みたいに窓があり、道路を見下ろす。窓枠とブラインドは白。でそこにクッションが置けて座れる!

あとで知ったんですけどこのアパートだけはセットだと。なんというリアリティ!

 

——映画に登場する部屋も気になるんですね笑

 

銀子  それはとっても気になります。どの映画でも。着ている服も、おいてあるものもね。

 

——小物もでしょうが、お気に入り作品なのでお気に入りシーンだらけだとは思いますが、ぜひ紹介を。

 

銀子  オーギーの昔の恋人として現れるのがルビー(ストッカード・チャニング)。「あなたの娘だから会って」と言われて (嘘つけ)と思いながらも無理やり連れていかれる。

「父親なんかいない」と悪態つかれて追い払われるようにオーギーとルビーは帰る。

そのあとの娘・フェリシティの顔です。

 

——顔だけ?セリフはなし?

 

銀子  そう。二人を追い出した後、アクションもなし。無言のアップ。それが彼女の気持ちすべてを物語る。切なく美しい。

この女優はそれ以来ひとつくらいしか映画で見かけないんです。それも大した役じゃなかったなあ。

 

もうひとつの好きなシーンも無言です。セリフなし。

ラシードが父親サイラス(フォレスト・ウィテカー)に本名を明かし、つまり自分が捨てられた息子なんだということですが・・・そこで父親は激しく動揺しひと悶着あったあとで

みんなで野外のテーブルを囲んでいるシーンです。

誰もが無言。

でも、映像にはないその前後の場面とそれぞれの胸の内をしみじみ想像させます。

葉巻を切らしたポールに自分の葉巻(たばこ?)を黙って差し出すサイラス。
ラシードは無言のままちいさな(母違いの)弟の頭を撫でる。

——うーん、そういうのってもしかして小説でいうところの「行間を読む」みたいなものですか?

 

銀子  そうかも。セリフのないシーンもそうですが、ほかにもあります。話が終わりになるにつれてだんだん俳優の顔のアップが多くなるんですよ。もう、画面いっぱいです。

こちらはそれをじっと見せられる。で、想像力を試される。

とても小説に近い、ってことでしょうか。

 

——街角のちいさなタバコ屋から始まるストーリー、お話を聞いていくと情景が広がるようです・・・

 

 

銀子  タバコ屋というと、もうひとつ話があります。

 

——映画ですか?小説ですか?

 

銀子  いえ、これはわたしの。

ずいぶん前のことです。

友だち、もちろんこの映画が好きなひとでしたが、名古屋にシガー・バーがある、そのロケーションがこれと似てるというので行ってみたんです。ほんとに交差点の角でね。感激しましたよ。

とにかく喫煙者は極悪非道・人非人扱いの昨今ですからね、シガー・バーなんていうのは迫害を避けて絶滅危惧種たちがひっそりと地下で集う、そんな店をイメージしていたんですが・・・

 

——違っていた?

 

銀子  大きな交差点の角でね、オープンテラスみたいになっていて全席喫煙可。まあ、あたりまえですよね笑 今はどうだか。 

明るいし、ちょっとしたライブなんかもときおりやってるようでした。

 

——そこで葉巻か煙草を買ったんですか?

 

銀子  いえ、昼時だったのでカレーを食べました笑 

でもその向かいの角からオーギーになりきって写真を・・といってもオーギーみたいにいいカメラではなくてデジカメでしたが・・・撮って帰りました。懐かしい思い出です。

 

えーっと、宗教的な意味でキスシーンをカットされるっていう映画があるんですが・・・

 

——はい、“ニューシネマパラダイス”ですね。もちろん知ってます。

その映画のキスシーンがカットされたんじゃなくて、「キスシーンカットの映画の映画」ですよね。ややこしいですが笑

 

銀子  “スモーク”の中でのオーギーと客との会話で、

『こんなもの、やめればいいんだ。タバコなんかすってるとこみつかったら壁の前に立たされて射殺されるんだよな』

『今日はタバコ、明日はセックス、もう3~4年もしたら知らない人間ににっこりするのも違法になるぜ』

ていうのがあって・・・

射殺はまああれですが笑 そのうち映画の喫煙シーンもカットされるようになるのかなあ。カットまで行かなくても、「劇中不適切な行為が登場しますが、時代背景を考慮してそのまま云々」って但し書きがつくとかね~

 

——たしかに笑 昔のようにタバコをすうのがカッコいいって時代ではないですから。

映画の中でも難しくなりますねえ。

 

銀子  主役級のいかにも、な渋いカッコいい俳優がタバコをすうってシーンなんかはわたしにはどうだっていいんですけど、俳優と同じで主役としてじゃなくて助演のタバコ。

たとえば“ゴッドファーザー

ドンが襲撃され入院した時。再度送り込まれるかもしれない殺し屋から守るため、病院前に立つマイケルとパン屋の男。タバコに火をつけようとするけれど、緊張と恐怖で手が震え、なかなか火が付かない・・・

 

“ナイト・オン・ザ・プラネット”だと

タクシーに乗せた女性客に

「ちょっとタバコやめてくださらない?」と言われ

「はーい、母さん」

そう答えて、すっていたタバコをもみ消し、その手ですぐまた次のタバコに火をつける

はすっぱな運転手のウィノナ・ライダー

 

“天国と地獄”では

もうもうと煙漂う刑事部屋や記者会見場。

それと

犯人竹内の勤務する病院のゴミ焼却場で

「ブリキは燃えねえってんだよ!」タバコを吸いながらやさぐれる

汚い火夫、藤原釜足

 

そういうのがわたしにとって大事な宝物みたいなシーンでして。

いやいや、映画にとっても大切なシーンでしょ?

・・・と言っておきます。

編集でカットですか?笑

 

——それはないです笑

元の小説である「オーギー・レンのクリスマスストーリー」をほぼ忠実に、というラストシーンについてはいかがですか?

 

銀子  肝心のクリスマスストーリーが始まる前です。

ポールがレストランでオーギーから話を聞いている。そこも原作どおりです。そしてお互いの腹を探るような笑顔が交互にアップになる。

ただ、原作だとここでポールの心の内が数行にわたってあるんですが、映画ではセリフもナレーションもなく、ただ、黙って微笑むポールに集約されてるんです。

そして・・・クリスマスの情景が・・・トム・ウェイツのInnocent when you dreamをバックにこれまたセリフひとつなくモノクロームで流れる、という。

 

 

もし興味を持たれて、まだみていないならどうぞ、とは思います。

感性の違うひとにとっては退屈極まりない映画でしょうが。

音楽でも映画でも同じです。みんな自分の好みがあって、心を揺さぶられるポイントって違いますもんね。

 

 

——実のところ、まだまだ聞き足りないんですけど、あまり引っ張るな、という銀子さんからの話もありますので、いったんこの辺でロングロングインタビューは終了ということにいたしましょう。どうもありがとうございました。

 

(いったん・終了)

ロングインタビュー  その9

——今回は具体的な作品名を挙げて、思いのたけをお話しいただきます!

 

銀子  一応は「映画と小説」というテーマのもとで、ね。好きな映画の好きなところ、となると際限なくいってしまいそうだし、広がりすぎてまとまりがなくなる恐れもありますから気をつけます~

 

——あっ、それはインタビュアーの力量によるかも。わたしも努力します笑

ではどうぞ。

 

銀子  邦画一作洋画一作で。まずは邦画、“たそがれ清兵衛”。

 

——公開は今から20年ほど前ですよね。これは大ヒットというのか、いろいろと受賞もし、興行的にも大成功でした。

 

銀子  タイトルになっている原作っていうのはほんっと、短い小説です。

ストーリーも違う。藤沢作品のいくつかを組み合わせたものが映画“たそがれ・・”になった。なので主人公の井口清兵衛っていうのは藤沢作品短編集に登場する下級藩士たちの合体と言えます。

よく、原作と違う、原作に忠実でないからダメとか嫌とかの意見もあるけれど、あれだけ高評価を得たってことは、そこは許されたのですよね。

 

——アニメでも小説でも実写っていうのは賛否わかれますね。難しい。

 

銀子  小説、つまり原作にこれまで触れなかったひとが映画をみてどう感じるかももちろん大事でしょうが、愛読者はどうか。「ううん、これは元とは違ってはいるが、たしかに藤沢周平の世界だな、描けているな」と思えたから成功例、ではないでしょうか。

 

——演じた俳優についてはいかがですか?

 

銀子  とにかく、もう、清兵衛の二人の子どもがかわいい!

演技力とかそういう子役的な話じゃなく。よくまあこんな子が、って。かぶりを振ったり、うなづいたり、目と目を見かわす、そんな仕草で泣けます。

それと、宮沢りえの美しさ。美貌だけではない、あの時代の、まあ時代劇なわけですが、キンキラキンでなくって、普通の生活の中にある所作の美しさにも。

 

——所作とは?たとえば?

 

銀子  あがりかまちで、ささっと足袋を手で払うとか、手早くたすきをかけるとか。子どもたちもそうです、親や祖母を敬い、「いってまいります」と手をつき挨拶。父親が帰宅すれば小さな体で刀を受け取り刀掛けへ運ぶ。

 

——主演より助演や脇役に目をかけられることの多い銀子さんですが、これではどうでしたか?

 

銀子  さあ来た笑 そうなんです、この作品だといわば憎まれ役の三人の俳優。

丹波哲郎大杉漣、深浦加奈子。出番は少しですが。

で、もうみんなこの世にはいないという・・・残念。

この三人がポイントを押さえているから、主役の二人が映える。まあ優れた脇役っていうのはそういうもんでしょうが。

 

——丹波さんは清兵衛の本家の叔父、深浦さんは宮沢りえ演じるともえの義姉ですね。

身内ならではのセリフがありましたねえ・・・そして共通した意識が。

 

銀子  清兵衛の世間体悪い暮らしを嘆き、のち添えをと縁談を持ってくる叔父です。

「なあ~に、女なんか尻が大きくて子どもをたくさん産めばそれでいい」

そこへ茶を持ってきた幼い娘に「論語を?女は学問なんぞしなくていい。ひらがなさえ読めりゃええ」って。

ともえの義姉は

「おなごはお侍と立ち話なんかするもんでねえ、みっともねえ。前からあんたにはそれを言いたかった。ましてやあんたは出戻りの独り身で・・・」

むっとして、

「なんでみっともないんですか?」というともえに

「あんたは姉のわたしに質問するんでがんすか?おなごはそんなことするもんでねえ!」

とまあ・・・

 

——で、清兵衛とともえはともに秘めたる反抗心のようなものを持っていた、と。清兵衛は職場(城内)でも変人扱い。ともえは不幸な結婚をした挙句の出戻りですが、聡明な先進派ですね。

 

銀子  そういう設定だからわたし、惹かれてしまうんでしょうねえ~どちらも実行できるかと言えば難しい。憧れてはいても。

 

——原作にはない登場人物も多いですが、これらも含め銀子さんの言葉を借りれば「キンキラキン」でない時代劇として、藤沢ワールドを再現できたってことでしょうか。一般的なカッコいい侍ではなく、「侍やめて畑仕事がしたい」と思っている貧しい侍・・・これはのちの“隠し剣・鬼の爪”の主人公もそうですね。

 

銀子  日々の暮らしに追われ薄汚れ、くすんでいき、生活のため武士の命である刀も売り、それでも人間としての大切なものを守っていきたい。

そういうのが、多くの共感?賛同?を得たんでしょう。わたしがこの作品をみていきたいと思うのも、やはり自分への叱咤であり、励ましの意味だと思うんです。

 

——もともと、動く映像(映画)の創世記はほぼドキュメンタリーものだったそうですね。そのうち興行としての価値が出来、ストーリーも求められるうち複雑化、字幕、トーキー・・・

 

銀子  興行ですからねえ。観客にこたえるためには内容も豊富にしなくちゃいけない。そこで戯曲とか小説などが映画化されたってことですね。で、映画作品には原作あり、ってのがどんどん増えていった・・・

 

——人気作品には当然映画化のオファーが来ますよね。

 

銀子  ファンとしては、自分の思いをつぎ込んだ小説が映画化によって捻じ曲げられはしないかという不安のほうが大きいと思うんです。なかなか許可が出ないものっていうのは作者としてもそうなんでしょう。そういう点で次にお話しするのはちょっと異例だったという映画です。

 

それにしても、今は携帯電話(スマホ)なしの現代劇はありえなくなりました。

パソコンまではまだそんなに気にならなかったけれど、どうしようもないですね。

 

——もはや小道具、ではないですもんね。

 

銀子  時代劇と言えば、ちょんまげ姿の侍が、というくくりですが、今後はスマホや防犯カメラのない時代が新たに時代劇と呼ばれる日が来るのではと思ったりします・・・

 

——では次回、洋画で。

 

 

 

 

ロングインタビュー  その8

——さあ、ようやく銀子さんが映画をみる時代にたどり着きましたね。

 

銀子 おまたせいたしました笑 独立独歩。傍らでウンチク語る人もいなくなり笑

でも、さて何を語るかというとまた困りますね。

ユーミン同様、新しいといいますか、ごく最近の作品には疎いので・・

 

——その点は問題にしません。お好きなものについてお好きなように。

 

銀子 そうですか、それなら。

 

——どうでしょう?俳優で?それともよくあるベストテン的なもので?

 

銀子 好きなものならたくさんあります。ベストテンとかオススメと言われたらまた困ります。わたしは評論家ではなくて、勝手にみたのを、その時どう感じたかを忘れないようにメモするつもりでブログに書いてて。わたしが「あ、これいい!」と思った作品がすべて名作ではもちろんないし、世間の高評価を受けた作品がわたしの五つ星とも限らない。

 

——映画関連のレビューは読まれますか?プロのものでなくても。

 

銀子 自分がみたあとで、チェックすることはあります。やっぱり映画好きのみなさんはどう思ったのかと気になって。

 

——読んでみていかがですか?

 

銀子 なんてすごい文章力をお持ちなんだ!とひれ伏すこともありますね。このひとたちはどれだけ映画をみてきたんだろうって。わたしもこんなふうに感想をかけたらいいのにって。感動したところでなかなかそれを文章で表現するのって無理ですよ。

表現したところで伝わるかどうかも・・・

でも、ブログのどこかに書いたはずです、“舟を編む”の原作のほうの言葉。あ、映画も好きなんですけどね。

「記憶とは、あいまいなまま眠っていたものを言語化する」

でしたか。

言語化しないと人には伝えられない、自分の中でも眠ったまま。

ただ、今の時代情報があふれかえってる。プロのライターであれ、一介の日記書きであれ、目に入ってくるものにはたぶん左右される。で、自分の考え・思いと混同しそうになる。無理からぬことです。

偉い学者のセンセイでもコピペしてしまうんですから。

 

わたしが映画の感想を書き記しておく上で、一番気を付けていることです。

 

——つまり、自分の言葉で、と?

 

銀子 そうです、短かろうと、拙かろうと、それ、心掛けてます。

ひとのもそう。

カメラワーク云々とか脚本どうこうなど、専門家じゃないから適当なことしかわからないしね。

「あの映画よかったよ」「あの映画が好き」は言えます。でも、それだけじゃ不満。ポイントでいい。どのセリフが心に残ったの?どのシーンが好きなの?音楽はどうだった?あなたのそれが知りたいのよって。

 

——なるほど。またベストテン話に戻しますが、それは無理ですか?

 

銀子 好きなもの、ですね。単に好きっていうなら“ジョーズ”“エクソシスト”“エイリアン”も今でも大好きですし、何度でもみてる。それを、例えばですね、自己紹介の「好きな映画」に書いていたらわたしという人間をわかってもらうには疑問ですよね。

 

——それは意外な作品名です笑

 

銀子 だからね、ほんと、難しい。好きなもの全部書いてしまうとまた輪郭がぼやけるし。

 

——ではベストテンやオススメからいったん遠ざかって、これもまたブログのどこかに書かれていましたが、映画化された小説について銀子さんの思いを語るのはいかがでしょう。作品タイトルを羅列するんじゃなくて、「映画と小説」的な。

 

銀子 あ、それはいいですね。とはいってもそれもまた作品は多いので、そのなかでわたしの好きなものについて。

読んでからみたか、みてから読んだか。どっかで聞いたような笑

 

——決まりましたね!では次回はそれで。