ほんとうにこんなことがあるのか?
からかわれたのか?

いやいや、
ナカダイくんはそんな手合いの人間じゃない。

指定された日が近づくにつれ
落ち着けわたし、と
三つの決まり事を唱え続け
その気になっていく。
一度も(実物に)会ったことはなくとも、
そして“あの世”からの客人であろうと、



「わたしは彼らと旧知の仲なのだ」

 




季節は冬。
会場は京都の老舗すっぽん料理店。
座敷に通されると
床の間を背にナカダイくんが鎮座していた。

 

やあやあいらっしゃい。
寒かったでしょう?まあお座りなさい。

いつだって彼は冷静かつおしゃれで紳士的。

 



最近どうですか?体調いかが?などと話しているうち
ミフネくん到着。
洋装だ。髪はきちんとなでつけてある。


よお!
いやあまいったまいった。
といいながらどっかと胡坐をかき
ネクタイを緩め、あごを撫でている。

なにがまいったのかしらないけれど
今日は機嫌良さそうで一安心。
だって機嫌の悪いときの彼に
ヘタに声はかけられない。
寄らば斬るぞ、みたいな。

 

 

 

あとはカツか?
あいつ遅いな。
さきに始めちまおうぜ、とのミフネくんの声に
みんなで卓上の材料に目をやっていると
ガラっとふすまが開きカツくん登場。


う゛う゛~
寒いったらありゃしない。
鼻水も凍っちまう!
あ゛~腹減ってんだ。
いや待て、それより酒だ!酒!

 

 

(つづく)

決めごとは・・・

①“どんな”ひとに会っても普段どおりに振る舞うべし。
旧知の間柄のような顔をして。
向こうもそう振る舞うことになっている。
そういった環境設定が必須ですから。
つまり、びっくりしたり感激しても顔に出したりうれしさのあまり涙ぐんだり
そういう大げさなことは一切しない。フツーでいること。

②一緒に食事をするべし。

③参加者を笑わせるべし。


どうですか?守れますか?


その眼力(メ・ヂカラ)でわたしをとらえ
ナカダイくんは言った。

え?それだけなんですかっ?
もちろんですもちろんです守れます!


もはやここで決まり事①が危ういわたし
呼び寄せたいメンバーの名前を告げたら
ナカダイくんは
「ああ、やはりね。そう来ると思っていましたよ。
わたくしも望むところです」
と、笑いながら実現を約束してくれたのだった。

 

 

 

(つづく)

すっぽん鍋4人会

 

 

宴会幹事(企画)はナカダイくん。わたしが彼にあの世から呼んでほしいとお願いしたのはあのおふたり。
「約束さえ守れるなら夢を実現させますよ」
まるで日本映画専門チャンネルそのままの(?)昭和豪華絢爛宴席にわたしは冷静でいられるのか?

 

 

1                 

 

今日は特別な日だ。

題して 『すっぽん鍋を食べる会』

 

幹事はナカダイくん、
参加メンバーはカツくんとミフネくん、
そしてこのわたしヤナガワ(仮)

カツくん、ミフネくんのふたりはあの世からの参加者。
銀幕のなかではそれぞれ今でもしょっちゅう会っているけれど
四人で食事なんてもちろん初めてのこと。

 

 

◇ 

 

 

「そんなことが出来るんですか?!」


顔見知りとのありふれた呑み会や宴会続き。
そして変わり映えのしない会場で
ワイドショウ的な男女のうわさ話に飽き飽きしていたわたしは
なにか刺激的で愉快なことを求めていた。

ナカダイくんはそういった人間とはちょっと違って
数少ない貴重な男友達だ。

そして
会いたいひと恋しいひと話を聞きたいひとは
すでにこの世にいない、とぼやくわたしに
“どんな”ひととでも会える
そんなスペシャル企画が可能だっていうことを
こっそり教えてくれたのだ。


「ええ、出来ますとも。
それにはあなたの熱い思いと
このわたくしの眼技(ガンギ)さえあればね」

眼技・・・
それは知る人ぞ知る
彼の得意技。


一も二もあったもんじゃない。
ぜひぜひ実現させてください、とわたしはお願いした。
熱い思いだけは誰にも負けません。


そうですかそれはよかった。
ただし、約束といいますか、
守っていただきたいことがいくつかありましてね。
ナカダイくんは続けて語った。

 

(つづく)

 

 

 

          

妄想鍋

春が来たらしい

 

数人の友だちはこの冬

カニ食べに行っていた」

などと連絡してきた

わたしはカニにもカキにも

心が動かない

 

もうどちらもシーズンは終わったか・・・

 

それでも

鍋は好きだ

 

料理らしい料理をしなくても

賑やかで温かくうまい

あの湯気の向こうに好きな人がいればいいと思う

 

 

近いうちに

そういうことが出来ればと思っていた

料理屋ではなく

誰かの家の食卓で

カセットコンロと鍋を持ち込み

平成最後の楽しい鍋会が出来ればと

 

しかしそれも無理らしい

 

そんなこんなを考えていたら

わたし得意な妄想で書いた文章を

某投稿サイトに載せたのを思い出し

ここにも載せておこうか、と

 

 

二年前の日記はこれだ

走る以蔵 - 銀色手帳

 

この後これを膨らませて

書いたんだ

 

 

「あのひとと

いつか食べたい

鍋料理」

 

 

ひそかなよろこび

アカデミー賞受賞作品続き

 

ある愛の詩

映画館でみたと思う

ポスターも思い浮かべることが出来る

誰とみたかは不明

 

何度でもみたい、というような

作品じゃないが・・・

 

今みると主人公たちのファッションが懐かしくて楽しかった

タータンチェックのスカートやマフラーなんてね

今でも好きだけど身に着けるにはちょっと工夫もいる

 

さて!

 

主人公(ライアン・オニール)の暮らす学生寮のメンバーに

トミー・リー・ジョーンズがいた

時の流れを感じるなあ

 

あと

驚いたのは

主人公(アリ・マックグロー)の父親役だ

なんと

ゴッドファーザー

愛馬の首をベッドに放りこまれる映画監督

あの彼だった

 

 

こういうのを偶然見つけるのが

古い映画をみる楽しみでもある

教訓

春を感じる休日の午後

いつものように

横になって映画チャンネルを見ていて

 

ふっと心の霧が晴れた

自分を追い込んでいる問題の

解決(ではないが転換か?)の糸口が

見つかったように思えた

 

 

イトイさんのツイッター

『おちつけ』『みわたせ』

という言葉が先日あった

そのとおりだ

わたしは目がくらみ目が曇っているのだ

人を見て

人を分析する

それが得意だと自分で思っていたはずなのに

今更ながら

なんて弱くてダメ人間なのか

人のことならいくらでも言うくせに

 

 

通勤時の行きかえりに流し、聴き、歌う

テーマソング的な曲

そらで歌えるまで続けるような

 

1月は“フラミンゴ”

2月は“人生は夢だらけ”

 

今月はまだ決まっていない

 

さてさて

 

答えは映画の中に

アカデミー賞受賞作品が

映画チャンネルで続々放映される時期だ

 

過去の受賞作品は

出来る限りみてきた(つもりだった)が・・・

先日録画した

“普通の人々”を本日鑑賞

もちろんタイトルとロバートレッドフォード監督作品ということは

わかってはいた

 

みていなかったのかな?いやそんなことはないだろうが

すっかり忘れている?いやそんなことは・・・

 

 

ここ一週間ほどわたしは

自分勝手な問題で自分勝手に苦しんでいた

眠れぬ夜も多く薬にも頼っている

 

・・・・・・・

 

この映画の主人公(学生・男)は

過去つらい体験をし自殺未遂もし

苦しみ

父親の勧めでいやいやながらセラピーを受けている

 

その中でのセラピストの言葉

「きみは過去、きみのやったことが許せないから苦しいんだ」

 

その通りだと思う

わたしも

わたしのやったこと、わたしのやっていること

つまりは自分が許せないから苦しい

 

 

主人公の母が自分の兄に食って掛かるシーン

(彼女は長男を亡くしている)

「あなたの息子は生きてる

慰めのようなことを言ったり見せたり

結局自分の幸せ自慢をしたいわけ?」

 

そうだ

状況も立場も違えど

過去、日記にわたしが書いた

友だちの家族自慢を嫌悪している問題は

こういう感情なんだ

自分を不幸だと思いつめ

自分の持っていない、わたしが過去になくしたものを

持っている人への甚だしい勘違いのヒガミ根性なのだ

 

 

 

是枝監督作品など

家族問題を扱ったものが注目を集める今

この“普通の人々”も

もう一度注目されてほしい

辛いし地味だし楽しくないが

そこにあるものは大きい

 

 

わたしも

経済的に許されるなら

信頼できるひとにセラピーを受けたい

もしくは

懺悔室で告解を