ほんとうにこんなことがあるのか?
からかわれたのか?

いやいや、
ナカダイくんはそんな手合いの人間じゃない。

指定された日が近づくにつれ
落ち着けわたし、と
三つの決まり事を唱え続け
その気になっていく。
一度も(実物に)会ったことはなくとも、
そして“あの世”からの客人であろうと、



「わたしは彼らと旧知の仲なのだ」

 




季節は冬。
会場は京都の老舗すっぽん料理店。
座敷に通されると
床の間を背にナカダイくんが鎮座していた。

 

やあやあいらっしゃい。
寒かったでしょう?まあお座りなさい。

いつだって彼は冷静かつおしゃれで紳士的。

 



最近どうですか?体調いかが?などと話しているうち
ミフネくん到着。
洋装だ。髪はきちんとなでつけてある。


よお!
いやあまいったまいった。
といいながらどっかと胡坐をかき
ネクタイを緩め、あごを撫でている。

なにがまいったのかしらないけれど
今日は機嫌良さそうで一安心。
だって機嫌の悪いときの彼に
ヘタに声はかけられない。
寄らば斬るぞ、みたいな。

 

 

 

あとはカツか?
あいつ遅いな。
さきに始めちまおうぜ、とのミフネくんの声に
みんなで卓上の材料に目をやっていると
ガラっとふすまが開きカツくん登場。


う゛う゛~
寒いったらありゃしない。
鼻水も凍っちまう!
あ゛~腹減ってんだ。
いや待て、それより酒だ!酒!

 

 

(つづく)