ロングインタビュー  その6

前回までは音楽、銀子さんにとっての大切な存在であるユーミンについて

語っていいただきました。

今回からは映画についてのお話を伺っていきたいと思います。

 

◇◇◇

 

——さて、よろしくお願いします。映画という言葉を含む、映画の感想についてのブログ(日記)はとっても多いんです。どこからいきましょうか。

 

銀子  これもやっぱり幼少期といいますか、映画というものを映画館でみたという時期からでないと・・・

 

——そうですね。では最初に行かれたというかみたというか映画館のお話を・・・

 

銀子  ごくありふれてます。共働き家庭で長らく一人っ子でしたから面倒を見てくれるというか、家にいたのは祖母です。普通ですよ、東映東宝ゴジラガメラ。あとは祖母の好みだったのかわからないけど“若大将シリーズ”や舟木一夫の映画笑

 

——銀子さんがねだって、ではなく?

 

銀子  ええ、そうなんですが、忘れられない怖いものもありまして。

 

——怖いもの?

 

銀子 今でも怖い~“マタンゴ”や“ゴケミドロ”です。なぜそんな映画を?と思っていたんですが“マタンゴ”は最近になって知ったのですよ、若大将と同時上映だったと。ああ、それでわたしはみたんだな、って。特撮ものについてはわたしの年代は円谷プロの申し子みたいなものなので、のちのちテレビでも大好きになっていきます。

 

——現代の若者といいますか、子どもたちとはずいぶん違いますね。

 

銀子 普通にジブリ作品のように優れたアニメ映画から入るんですもんねえ。えらい違い。

祖母との映画館はそんな感じで。たまに母が連れて行ってくれるのはディズニーとか・・ディズニーと言っても今みたいなのじゃないですよね。“バンビ”や“わんわん物語” あとはうろ覚えなんですが“白蛇伝

映画館の入り口でシールをもらった記憶があるんです。大事にしていました。

 

——そう考えると、今の子どもたちってすごい環境にありますね。映画だけではないですが。

 

銀子  夏休みお正月春休みに子ども会から行くような映画がメインだったし。なにもかもがすごいですね今は。優れたアニメでも(そうでもなくても)いつだって見られる。特別なものじゃないし。

数年前のことです。ある時、映画館で隣に座っていた小さな男の子が・・何の映画だったか忘れたんですけど上映中に親に「これってCGなんだよね」と言っているのを聞きまして・・・ああ、そういうふうに思うんだと。

ゴジラでもガメラでも、そんなふうに思いながらみることはなかったはずなんです。

セットを作り、カメラを回す人がいて、とはね。一般の子どもはね。

 

——今はたぶん家庭で大人が話してるからでしょうねえ・・・

 

銀子 まあ子どものころはそんなふうで。とりたてて語るべきこともないです。

もうちょっと大きくなって、自分で映画館へ行ける年代になっても、わたしはそれほど映画に関心は持てなかった。映画好きの友だちっていうのはいましたよ。そういう子はスクリーンとかロードショーみたいな映画雑誌も買ってたし、たまには付き合って映画館へも行くけれどそれは“ロミオとジュリエット”“ある愛の詩”程度。

別段感動ってこともないし、やっぱり歌のほうがよかったわけです。

 

——なかなか映画に関心は向いてこないですが・・笑 

 

銀子  もうちょっと時間かかります。映画というものを意識したのは高校生になって、初めてBFが出来たころ。その彼っていうのは中学時代の恩師の影響で、友だちと映画を作っていたんです。

 

——映画製作とはこれはまた!どんなものですか?

 

銀子  たかだかあの頃の演劇好きの高校生ふぜいのやることですから。でもああいうひとたちは「まずとにかく映画を撮ろう」って気になるんですかね笑

村上龍の“69”そのまんま。

  当時は8ミリでしたね。地元の映画祭みたいなのに参加するとかでなんか悲恋ものみたいなのを。その現場を見に行ったりしたのは、たとえ田舎の高校生でも、作る側に立ってみる、ってことを知ったきっかけだったと思います。

で、吹き替えを頼まれたのが交際のきっかけです。主演した子が吹き替え当日に都合がつかず、時間がなくてわたしが代役を頼まれたんです。

あ、吹き替えじゃないか。映像だけ撮影し終わっていて、音(セリフ)は後から流しながら録る、アフレコっていうのか。間違ってたらすみません。

 

——高校生のデートというと「映画に行きませんか?」では?

「映画を作りませんか?」とは異色かと。

 

銀子 そうですね、その彼ともいくつかみた記憶はあります。

 

——覚えているならタイトルを聞きたいです。

 

銀子 ブログの中にもぽろぽろとあるはずです。

最初のは忘れもしません、“スティング”と“ペーパームーン”の二本立て。

まあこれはよしとして。

そのあとは~“青春の蹉跌”とか“サンダカン八番娼館”とか、、、わたしにはむずかしいというか「えー?」みたいな・・・そういう小難しいのがお好みだったんですね。

 

——楽しめる感じではないですね笑 そんな作品を見た後でどんな会話をしていいものやら笑 彼とはその後は?

 

銀子 高校卒業後東京へ行ってしまったしね。20歳ころに会ったのが最後で、今から10年ほど前のこと、あることがきっかけで所在が知れてメールのやり取りをしたんです。で、その時のメールに「やりたかったことはたいていやったけれど、映画を作ることだけは実現できないままです」と。へえ、そんなことまだ思ってるんだなって。

こんなふうで、なかなか映画を楽しむというか、「映画っていいもんですね!」には縁遠い時代がまだ続きます。

 

——え~?そうなんですか?

 

 

(続きます)