ロングインタビュー  その5

——では引き続きいきます。高校生から大学生へ。そして卒業、と・・・

 

銀子 大人の階段のぼってきましたってところですかね。「君はまだシンデレラさ♪」

 

——「少女だったと懐かしく振り向く日があるのさ~♪」ですねえ

 

銀子 全くその通りと言いたいですが、わたしって子どもだったのか老けてたのかよくわかりませんよ・・・

 

——つられてつい、歌ってしまいました笑 さてユーミン話も限定ラインまで残り少なくなってきてます。いよいよカキョウに入ってまいります。

大学卒業されたのは?

 

銀子 1981年。その年に何があったかというと、“昨晩お会いしましょう”の一曲目の「タワーサイドメモリー」なんですね。

 

——ああ、ポートピア!kobe girl とか。これ、モノレールが出てきますが、ポートライナーのことでしょうか。タワーはポートタワー?

 

銀子 前回、サーファーって歌詞にがっかりしたと言いましたがこれも実は「えー、やめてー」って。恥ずかしいっていうか、こんなことを歌にしないでって。俗っぽいのは勘弁してほしいと思いました。自分にとってたしかに思い出の多い町のはずなのにそれは違うんですね。「そして神戸」はちなみにオッケーです笑

でもでも、ジャケットは好きなほうです。トレンチコートの後ろ姿、かっこいいです。しかも場所はどこなんだろ?なんだか荒地みたいな・・

 

——そのアルバムの前に一枚ありましたね、“水の中のASIA” 4曲だけの。

 

銀子 埃っぽいアジアの街へ連れていかれるんですよね~。ユーミンにしては珍しいというか、父とか母とか妹とか日本なんていう言葉が。うん、このアルバムでは通常の「ママ」でなくて「母」ですもん。しみじみします。で、このアルバムは音がいい!そういうの(メカニック?録音技術?)に頓着しない若かったわたしでもそれはハッとしましたっけ。

 

——ユーミンが自分自身の血を振り返ってるみたいな感じですね。で、そのあと、限定最後の“パールピアス”となります。

 

銀子 とうとうきました!これはですね、とにかく歌詞カード! 敬愛する故・安西水丸画伯が描かれてて。もうそれでまいってしまいました。ジャケットはきれいなグリーンです。

タイトルである「真珠のピアス」の歌詞はかなりなもんですが、全体的に恋愛モードでも哀しくかつ穏やか。なので好きなアルバムです。

特にラストの「忘れないでね」とか・・・ルルル,と三回鳴らして切ったら・・・忘れないでねBABY BABY。その前の「消息」なんかも。わたしはあなたのグレイのしみになる、とか。

 

——こうやって見ていくとアルバムの最後の曲はおおかた静かですよね。

 

銀子 そうなんです。“流線形”だと「12階の恋人」

紙のように舞うわ~なんてズキーンってなりましたよ。

“OLIVE”は「りんごの匂いと風の国

“時のないホテル”は「水の影」・・・って話してしまうともう決まったようなもんですね笑

 

——え?それって好きな曲リスト入りでしょうか?

 

銀子 はい、それらがわたしの選ぶユーミンの好きな曲たちなんです。ま、殿堂入りといいますか、別格で「ひこうき雲」、そのあとはだいたい各アルバムの最後を飾っている曲たちです。これは意識した構成なんでしょうか?余韻をもって終わらせる。

だからシャッフルさせてはダメなんですよね。曲順はそのままで聴かないと。

 

——ひこうき雲」は別格なんですね。まあわかるような気もします。

 

銀子 もうひとつ、どうしても挙げておきたいのは“14番目の月”のラスト曲。

「晩夏」でして。サブタイトルとして「ひとりの季節」あれ?「ひとりの夏」だったかな?

これはもう歌詞が大好きで・・

まあ、検索していただけば全部読めますが、控えめな曲。

悲しくてさみしくて涙がこぼれるだとか、あなたが好きだとか会いたいとか、そういう陳腐なのは一切なくてね。淡々とした言葉から風景・情景が浮かんでくる。実にいいです。

 

——ユーミンは冬。サザンの夏に対してそんなふうに言われてましたが・・

 

銀子 それも単にどこかのスキー場の思惑かもしれません笑。 ユーミンが夏、とくにその終わりごろを歌ったものはすごくいいですよ。「晩夏」もそうだし、「9月には帰らない」

「夕涼み」なんかもいいですねえ。

「9月の蝉しぐれ」これは“DAWN PURPLE”収録曲ですが。

おしえて 大人になるっていうのは平気になる心・・・

これって、「水の影」の歌詞、

よどみない浮世の流れ 飛び込めぬ弱させめつつ

けれど傷つく心持ち続けたい

とつながってますよねえ。

響く歌詞です。

 

夏が行こうとしているときには断然“パールピアス”と“紅雀”です。

 

——お好きな曲はわかりました。で、好きじゃないのは?どうですか?語りますか?

 

銀子 うーん。やめときましょうか笑 あるにはあるんですが、まあいいかな~笑

ただ、一曲、ずっと「うーん。なんでこんな曲を」っていうのがありまして・・・

ひとにも言ったことはなくて思ってただけ。それを娘としゃべっているときにぽろっと曲名を口にしたんです。そしたら娘も同じことを思っていた笑 CD聴いててその曲になるととばすっていうんです。同じことしてる!これはおかしかった。

 

——ひこうき雲」っていうのはこれですね!

この日のブログに書かれていた曲っていうのは!

月に願いを - 銀色手帳

 

銀子 はい、ご明察。もうこれはですね、親しいものたちに公言してます。

以前子どもたちと集まった時、「母と言えばユーミンを聴きながらご飯の支度をしている姿」と言われまして。これが母親としてのわたしのイメージらしい。なので納得でしょうね。

 

——銀子さんが大切に思っておられる音楽、特にユーミンについてお話を聞いてきましたが、いったんこのあたりでまとめましょうか。語り足りないとは思いますが。

 

銀子 ありがとうございます。音楽評論でもなんでもないし、ただ自分の半生の記ですよね。でもこんなにまとめて語ったことってたぶん初めてです。おっしゃるとおり、まだまだ細かいことならいくらでもありますが際限ないので・・・

よく言いますよね、無人島へもっていく本とかCDとか。

無人島へもっていくんじゃなくて、もし音楽を奪われてしまうなら、そしていくつかだけは許されるならわたしはこのユーミンの13枚だけで構わないと言えます。

 

——実にロングでした。でもまだ映画のお話もありますから。

 

銀子 そうそう。そっちの話もでしたね。ではまたお付き合いよろしくです~