無題
夜のひんやりした空気が心地よい
友人たちは
今何をしてこの空気を感じているだろう
私は毎夜古い映画を観て
古い音楽を聴き
炭酸水で割ったワインを飲んで
傍らの猫を愛でる
何をしても何をみても味気ない時間は通り過ぎたようだ
これからやってくる時期にむけて
引き出しを半分空けるため
衣類を整理している
クローゼットを眺めると
今から着られる大好きな服に心が浮き立つ
食べるものなど
私はいくらでも始末できるしむずかしいことは言わない
でも身につけるものだけはそうはいかない
深いところで言葉を交わす友も同じだ
ただ、友は装飾ではなく
単にステイタスを高めるためのものでもない
はやりに流され手に入れたものは
やがて色褪せどこかへ置き去りにし存在すら忘れ
「どうしてこんなものを?」と思う日がやってくる
自分にとって価値あるものを
大切に身につけ
手入れもし
「ああ、またこれが着られる」と
楽しみに出来る
たとえそれがタンスの肥やしであろうとも
いつまでだって手放せない