ロングインタビュー その4
——今日はもういきなりお話に入りますね。
アルバムといいますか、期間を限定していただいたのでその間を。
銀子 はい、“ミスリム”の後からですね。
——中学生時代はあの二枚、そして銀子さんは高校生となり・・・
銀子 そうです、高校時代は“コバルトアワー” “14番目の月”
これらもそれぞれ場所があります。
“コバルトアワー”は廊下、“14番目の月”は美術室笑
もう大昔のことなのに、友だちとそれについて語り合った場所が伴ってて
いまだにそれは鮮明で。
——ピアノコピーはどうでしたか?最初の二枚とはずいぶんアレンジや曲想もかわってきていますね?ジャケットもペーター佐藤!
銀子 それまでは格調高いというか、重厚だったんですけどここでガラっと。
音楽的にも違っていましたね。しょっぱな、セスナの音ですから。
これも最後の「アフリカへ行きたい」まで聴いてわかることなんですけどね。
紙ヒコーキからセスナへ笑
曲は・・アコースティックなものもあるけれど、かなりポップで。
わたしは当時はギターを手にしていたし、仲間もでき、といっても男子ばかりでしたが。一人でユーミンのコピーっていうのはとてもとても。なので友だちとギターでやりやすいかぐや姫とかイルカとかアリスとかそんなのを練習してました。
——ユーミンとは距離を置いて?
銀子 距離を置くなんていうのはおこがましいですよ。ずっと聴いてはいましたけど・・・なんていうのか・・・
食事に例えれば、そっちのギターコピーは日常的に毎日普通の家で食べるご飯です。
味も、作り方も、自分にだって作れる。誰だって食べてるし知ってる。
だけどユーミンの音楽っていうのはその頃のわたしにとってはどこか雲の上のようなレストランにあるフランス料理みたいなもので。
——三ッ星レストラン?フランス料理ですか。
銀子 そんな言葉はなかったけど笑 もちろんフランス料理なんて食べたこともないし、想像するだけ、イメージとして、です。
味も知らない、どんなメニューがあるのかも知らない、たとえレシピがあったとしても食材さえ手に入らないから作ろうにも作れないってところ。
——かぐや姫やアリスなら作れますか笑
銀子 ファンの方には叱られそうだけど。歌の内容もまあ、わかる。雲の上じゃない。コード進行なんか真似っこしてそれっぽい曲も作れそう。でもユーミンは違いますね。どんなに無理して模倣して作ってみたところで、それをのせようとしたら家の台所の棚にある煮魚をのせるような地味な皿しかない。
——なるほど。ユーミンの曲(料理)はそいういう皿にはのってませんね確かに。
銀子 結婚がひとつのラインと前回言ったけれど、高校生から大学生になるところでもまたそれとは違いますがまたひとつの線引きがありまして。
——ほほう、それはどういった意味でしょうか?
銀子 大学生となると、私服となり化粧もし、男子は車を手に入れたり煙草を堂々と喫ったり酒も飲む。駆け出しの大人としての恋愛もする。このあたりでそれまでとは違って、いよいよユーミンの曲が身近に迫ってくる、それまでは「大人の歌なんだ」と思っていたものがだんだんわかってくる、と。
——アルバムとしては“紅雀” “流線形80” “OLIVE” “悲しいほどお天気” “時のないホテル”と続きますね。
銀子 ああ~いいですねえ~まさに学生時代!“紅雀”はわたし的にはちょっと異色の一枚なんですけど、“流線形”は当時サーファーなんて言葉があるだけで「おや?」と思ってちょっと落ちました。まあ、後で“SURF&SNOW”も出るわけですけど。まあ、いいんですけど明るくて笑
——軟派なのはお好みじゃないんですか。
銀子 はっきり言えばそうですね、ちょっと悲しかった。ついでに言いますと「恋人がサンタクロース」なんていうのは嫌いな曲リストに入ります。
——嫌いな曲リスト・好きな曲リストについてはまた後日伺う予定ですので。そこはいまは飛ばして・・
ブログに「ダウナーな曲が好き」と書かれていたことがありますよね?全曲通じてそうですか?
銀子 ユーミンに限らず、です。だいたいロックも苦手だし、能天気なポップ系よりはズーンと落ち込むような、いや違う、静かな曲のほうが好みです。なのでデビューアルバムとその次のもののようにピアノ主体で作られた曲に魅力を感じます。
——ユーミンのライブ、以前はコンサートと言ってましたっけ、それに行かれたことは?
銀子 一度だけあります。もう少し後、“昨晩お会いしましょう”発売のころじゃないかなあ、「カンナ8号線」を歌っていたように記憶しているので。
——どうでしたか?それだけ思い入れのあるユーミンを生でみて。
銀子 いやそれがほとんど覚えてません~印象に残らなかったんですね~
——どういうことなんでしょうか?
銀子 普通のコンサートですよ、田舎町だし。よくうわさで聞く(見る)イリュージョンみたいな笑 ど派手なセットもないし。ま、それを期待してもいなかったし。そういうのは好きじゃないし。つまるところわたしはアルバムを聴くほうが好きだっていうことです。舞台というかステージ物は性に合わない。
完成した、完成度の高い、安定したアルバムがあればそれでいいってことなんです。
——では次はその“昨晩お会いしましょう”のあたりを伺います。