雑文

『ガーデン埠頭』  2002年10月27日



その女は同じ男に二度ふられた
二度目にふられた時、女は
「どうして最初にふられた時点で止めておかなかったのか」と
激しく自分を責めた
バカじゃないの?ホントに


自分を捨てた男のことを恨むことが出来なくて
いつまでも恋しく思う自分が惨めだった




重油のにおいが満ちる港近くの公園で
泣き顔が少しでも元に戻るまで
ケータイだけを手に包んでじっと座っていた
何の音も聴こえない
どれくらいの時間がたったのかもわからない



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「よかった、いたんだ」

あいつと私の共通の友人であるMが私の前に立っていた

「きっとまだ電車には乗れないだろうと思ってさ」

Mは手にコンビニの袋を下げていた
私の目はといえば
そのビニール袋が風に吹かれる様子を
ぼんやりと眺めるだけで
Mがやってきたことをまだきっちり認識できずにいた


そうだ私、Mに電話したんだ
あいつから少しでも離れたくて歩いたけれど
どうやってこの公園に来たのかわからない
Mに電話して何を話したのかも覚えていない


「とりあえずおまえの好きなもの、買ってきた」

そう言いながらがさがさと袋に手を入れ中身を取り出して見せる


うまい棒、蒲焼さん太郎、キャベツ太郎、梅ミンツ、花串カステラ・・・・

こんな、こんなときに
どうして安物のお菓子買ってくるの?
まるで私
どぎついパッケージの色は
泣きすぎて麻痺していた
私の瞼をこれでもかと刺激する。
安っぽくて、深みがなくて、そこらへんのコンビニのドアのあたりで
ごみ箱にも入れられなくて、ぽいと捨てられる
子どもだましだよ、大人じゃ見向きもしないよ
たまに面白がって買ってみるだけ


だけどまたあふれてきた涙は
さっきまでとは違った味がした



「ま、いっしょに食おうぜ
オレ、ポタージュ味
おまえは? エビマヨ?とんかつソース?たこ焼き?」




案外初めのときよりも
早く立ち直れるかもしれないな
そうありたいな
手渡されたうまい棒を持って私はそう思った