ロングインタビュー その10
——ついにこのインタビューも10となりましたね~
銀子 よくひっぱりました笑
——今回は洋画で、銀子さんのお好きな作品で、小説がもとになっているもの、です。
銀子 長くなりそうな予感が笑 たぶん延々語るっていうのは最初で最後だと。
——覚悟はできておりますので、心置きなくどうぞ。
銀子 はい、今回は“スモーク”です。
ですが・・・映画が始まると「a film by Wayne Wang and Paul Auster」と。
つまり、原作者(作家)がシナリオを書き、のちにキャスティングにもかかわりを持った、という作品。二人で作った映画なんだ!ですね。
——そういうことは大変珍しいことなんですね。原作っていうのはどのような?
銀子 オースターがニューヨークタイムズに書いた短いクリスマスストーリーだったそうです。原題は「オーギー・レンのクリスマスストーリー」
新聞だと特集で1ページ。それを読んだ監督が感動したようですが、ちょっと引用しますと
『読み終わったときには僕はとても近しいひとから素晴らしいクリスマスプレゼントをもらったような(中略)僕は妻に尋ねた。「ポール・オースターって誰?」 』
そしてこれが映画になった時には、ストーリーも登場人物も膨らみ、元の小説はラスト数分で映像になり姿を見せます。
——その数分間の物語は小説に忠実なんですか?
銀子 そうです。これがラストに来るために二時間かけた映画があるというわけですね。
——タイトルが“スモーク” つまり煙ですね。
銀子 ブルックリンにあるタバコ屋、正確には“ブルックリン葉巻商会” 小さな店。そこを舞台にしてストーリーが始まる。店主はオーギー、演じたのはハーベイ・カイテル。もうね、大好きな俳優のひとりです、セクシーなんですよ~
——はあ、セクシー?ですか?失礼ながら若いわけでもスタイルがいいわけでも美形でもないですよね?まあ、銀子さんが好まれるのはそういう単に美しい男性じゃないことは知ってますが笑
ジョディ・フォスター演じた少女娼婦のポン引き。ランニングシャツなんか着てるヘンな男。名前がスポーツ・・・可笑しすぎます。
で、“ピアノレッスン”では裸体を披露?してますが、もう、素敵でしたね。人間というより動物って感じ笑
話がそれました・・・そのタバコ屋の客として登場し、オーギーと絡んでいくのが作家のポール。俳優はウィリアム・ハート。
役としてはスランプ、というか妻を亡くして立ち直れずにいる作家。そのポールと知り合った少年ラシードとラシードの父親捜しの話が絡みます。
——作家で名前がポール?それは原作者と同じではないですか?
銀子 それはあまり関係ないみたいです。作家というとかっこよさそうに思えるけど、このポールは服装もヨレヨレで、鍵も壊れてるようなボロいアパート住まい。部屋も散らかってる・・わけですが、わたしはまたこのアパートがとても好きなんです!
奥が仕事部屋、ま四角じゃなくて、半円形みたいに窓があり、道路を見下ろす。窓枠とブラインドは白。でそこにクッションが置けて座れる!
あとで知ったんですけどこのアパートだけはセットだと。なんというリアリティ!
——映画に登場する部屋も気になるんですね笑
銀子 それはとっても気になります。どの映画でも。着ている服も、おいてあるものもね。
——小物もでしょうが、お気に入り作品なのでお気に入りシーンだらけだとは思いますが、ぜひ紹介を。
銀子 オーギーの昔の恋人として現れるのがルビー(ストッカード・チャニング)。「あなたの娘だから会って」と言われて (嘘つけ)と思いながらも無理やり連れていかれる。
「父親なんかいない」と悪態つかれて追い払われるようにオーギーとルビーは帰る。
そのあとの娘・フェリシティの顔です。
——顔だけ?セリフはなし?
銀子 そう。二人を追い出した後、アクションもなし。無言のアップ。それが彼女の気持ちすべてを物語る。切なく美しい。
この女優はそれ以来ひとつくらいしか映画で見かけないんです。それも大した役じゃなかったなあ。
もうひとつの好きなシーンも無言です。セリフなし。
ラシードが父親サイラス(フォレスト・ウィテカー)に本名を明かし、つまり自分が捨てられた息子なんだということですが・・・そこで父親は激しく動揺しひと悶着あったあとで
みんなで野外のテーブルを囲んでいるシーンです。
誰もが無言。
でも、映像にはないその前後の場面とそれぞれの胸の内をしみじみ想像させます。
葉巻を切らしたポールに自分の葉巻(たばこ?)を黙って差し出すサイラス。
ラシードは無言のままちいさな(母違いの)弟の頭を撫でる。
——うーん、そういうのってもしかして小説でいうところの「行間を読む」みたいなものですか?
銀子 そうかも。セリフのないシーンもそうですが、ほかにもあります。話が終わりになるにつれてだんだん俳優の顔のアップが多くなるんですよ。もう、画面いっぱいです。
こちらはそれをじっと見せられる。で、想像力を試される。
とても小説に近い、ってことでしょうか。
——街角のちいさなタバコ屋から始まるストーリー、お話を聞いていくと情景が広がるようです・・・
銀子 タバコ屋というと、もうひとつ話があります。
——映画ですか?小説ですか?
銀子 いえ、これはわたしの。
ずいぶん前のことです。
友だち、もちろんこの映画が好きなひとでしたが、名古屋にシガー・バーがある、そのロケーションがこれと似てるというので行ってみたんです。ほんとに交差点の角でね。感激しましたよ。
とにかく喫煙者は極悪非道・人非人扱いの昨今ですからね、シガー・バーなんていうのは迫害を避けて絶滅危惧種たちがひっそりと地下で集う、そんな店をイメージしていたんですが・・・
——違っていた?
銀子 大きな交差点の角でね、オープンテラスみたいになっていて全席喫煙可。まあ、あたりまえですよね笑 今はどうだか。
明るいし、ちょっとしたライブなんかもときおりやってるようでした。
——そこで葉巻か煙草を買ったんですか?
銀子 いえ、昼時だったのでカレーを食べました笑
でもその向かいの角からオーギーになりきって写真を・・といってもオーギーみたいにいいカメラではなくてデジカメでしたが・・・撮って帰りました。懐かしい思い出です。
えーっと、宗教的な意味でキスシーンをカットされるっていう映画があるんですが・・・
——はい、“ニューシネマパラダイス”ですね。もちろん知ってます。
その映画のキスシーンがカットされたんじゃなくて、「キスシーンカットの映画の映画」ですよね。ややこしいですが笑
銀子 “スモーク”の中でのオーギーと客との会話で、
『こんなもの、やめればいいんだ。タバコなんかすってるとこみつかったら壁の前に立たされて射殺されるんだよな』
『今日はタバコ、明日はセックス、もう3~4年もしたら知らない人間ににっこりするのも違法になるぜ』
ていうのがあって・・・
射殺はまああれですが笑 そのうち映画の喫煙シーンもカットされるようになるのかなあ。カットまで行かなくても、「劇中不適切な行為が登場しますが、時代背景を考慮してそのまま云々」って但し書きがつくとかね~
——たしかに笑 昔のようにタバコをすうのがカッコいいって時代ではないですから。
映画の中でも難しくなりますねえ。
銀子 主役級のいかにも、な渋いカッコいい俳優がタバコをすうってシーンなんかはわたしにはどうだっていいんですけど、俳優と同じで主役としてじゃなくて助演のタバコ。
たとえば“ゴッドファーザー”
ドンが襲撃され入院した時。再度送り込まれるかもしれない殺し屋から守るため、病院前に立つマイケルとパン屋の男。タバコに火をつけようとするけれど、緊張と恐怖で手が震え、なかなか火が付かない・・・
“ナイト・オン・ザ・プラネット”だと
タクシーに乗せた女性客に
「ちょっとタバコやめてくださらない?」と言われ
「はーい、母さん」
そう答えて、すっていたタバコをもみ消し、その手ですぐまた次のタバコに火をつける
はすっぱな運転手のウィノナ・ライダー。
“天国と地獄”では
もうもうと煙漂う刑事部屋や記者会見場。
それと
犯人竹内の勤務する病院のゴミ焼却場で
「ブリキは燃えねえってんだよ!」タバコを吸いながらやさぐれる
汚い火夫、藤原釜足。
そういうのがわたしにとって大事な宝物みたいなシーンでして。
いやいや、映画にとっても大切なシーンでしょ?
・・・と言っておきます。
編集でカットですか?笑
——それはないです笑
元の小説である「オーギー・レンのクリスマスストーリー」をほぼ忠実に、というラストシーンについてはいかがですか?
銀子 肝心のクリスマスストーリーが始まる前です。
ポールがレストランでオーギーから話を聞いている。そこも原作どおりです。そしてお互いの腹を探るような笑顔が交互にアップになる。
ただ、原作だとここでポールの心の内が数行にわたってあるんですが、映画ではセリフもナレーションもなく、ただ、黙って微笑むポールに集約されてるんです。
そして・・・クリスマスの情景が・・・トム・ウェイツのInnocent when you dreamをバックにこれまたセリフひとつなくモノクロームで流れる、という。
もし興味を持たれて、まだみていないならどうぞ、とは思います。
感性の違うひとにとっては退屈極まりない映画でしょうが。
音楽でも映画でも同じです。みんな自分の好みがあって、心を揺さぶられるポイントって違いますもんね。
——実のところ、まだまだ聞き足りないんですけど、あまり引っ張るな、という銀子さんからの話もありますので、いったんこの辺でロングロングインタビューは終了ということにいたしましょう。どうもありがとうございました。
(いったん・終了)
ロングインタビュー その9
——今回は具体的な作品名を挙げて、思いのたけをお話しいただきます!
銀子 一応は「映画と小説」というテーマのもとで、ね。好きな映画の好きなところ、となると際限なくいってしまいそうだし、広がりすぎてまとまりがなくなる恐れもありますから気をつけます~
——あっ、それはインタビュアーの力量によるかも。わたしも努力します笑
ではどうぞ。
銀子 邦画一作洋画一作で。まずは邦画、“たそがれ清兵衛”。
——公開は今から20年ほど前ですよね。これは大ヒットというのか、いろいろと受賞もし、興行的にも大成功でした。
銀子 タイトルになっている原作っていうのはほんっと、短い小説です。
ストーリーも違う。藤沢作品のいくつかを組み合わせたものが映画“たそがれ・・”になった。なので主人公の井口清兵衛っていうのは藤沢作品短編集に登場する下級藩士たちの合体と言えます。
よく、原作と違う、原作に忠実でないからダメとか嫌とかの意見もあるけれど、あれだけ高評価を得たってことは、そこは許されたのですよね。
——アニメでも小説でも実写っていうのは賛否わかれますね。難しい。
銀子 小説、つまり原作にこれまで触れなかったひとが映画をみてどう感じるかももちろん大事でしょうが、愛読者はどうか。「ううん、これは元とは違ってはいるが、たしかに藤沢周平の世界だな、描けているな」と思えたから成功例、ではないでしょうか。
——演じた俳優についてはいかがですか?
銀子 とにかく、もう、清兵衛の二人の子どもがかわいい!
演技力とかそういう子役的な話じゃなく。よくまあこんな子が、って。かぶりを振ったり、うなづいたり、目と目を見かわす、そんな仕草で泣けます。
それと、宮沢りえの美しさ。美貌だけではない、あの時代の、まあ時代劇なわけですが、キンキラキンでなくって、普通の生活の中にある所作の美しさにも。
——所作とは?たとえば?
銀子 あがりかまちで、ささっと足袋を手で払うとか、手早くたすきをかけるとか。子どもたちもそうです、親や祖母を敬い、「いってまいります」と手をつき挨拶。父親が帰宅すれば小さな体で刀を受け取り刀掛けへ運ぶ。
——主演より助演や脇役に目をかけられることの多い銀子さんですが、これではどうでしたか?
銀子 さあ来た笑 そうなんです、この作品だといわば憎まれ役の三人の俳優。
で、もうみんなこの世にはいないという・・・残念。
この三人がポイントを押さえているから、主役の二人が映える。まあ優れた脇役っていうのはそういうもんでしょうが。
——丹波さんは清兵衛の本家の叔父、深浦さんは宮沢りえ演じるともえの義姉ですね。
身内ならではのセリフがありましたねえ・・・そして共通した意識が。
銀子 清兵衛の世間体悪い暮らしを嘆き、のち添えをと縁談を持ってくる叔父です。
「なあ~に、女なんか尻が大きくて子どもをたくさん産めばそれでいい」
そこへ茶を持ってきた幼い娘に「論語を?女は学問なんぞしなくていい。ひらがなさえ読めりゃええ」って。
ともえの義姉は
「おなごはお侍と立ち話なんかするもんでねえ、みっともねえ。前からあんたにはそれを言いたかった。ましてやあんたは出戻りの独り身で・・・」
むっとして、
「なんでみっともないんですか?」というともえに
「あんたは姉のわたしに質問するんでがんすか?おなごはそんなことするもんでねえ!」
とまあ・・・
——で、清兵衛とともえはともに秘めたる反抗心のようなものを持っていた、と。清兵衛は職場(城内)でも変人扱い。ともえは不幸な結婚をした挙句の出戻りですが、聡明な先進派ですね。
銀子 そういう設定だからわたし、惹かれてしまうんでしょうねえ~どちらも実行できるかと言えば難しい。憧れてはいても。
——原作にはない登場人物も多いですが、これらも含め銀子さんの言葉を借りれば「キンキラキン」でない時代劇として、藤沢ワールドを再現できたってことでしょうか。一般的なカッコいい侍ではなく、「侍やめて畑仕事がしたい」と思っている貧しい侍・・・これはのちの“隠し剣・鬼の爪”の主人公もそうですね。
銀子 日々の暮らしに追われ薄汚れ、くすんでいき、生活のため武士の命である刀も売り、それでも人間としての大切なものを守っていきたい。
そういうのが、多くの共感?賛同?を得たんでしょう。わたしがこの作品をみていきたいと思うのも、やはり自分への叱咤であり、励ましの意味だと思うんです。
——もともと、動く映像(映画)の創世記はほぼドキュメンタリーものだったそうですね。そのうち興行としての価値が出来、ストーリーも求められるうち複雑化、字幕、トーキー・・・
銀子 興行ですからねえ。観客にこたえるためには内容も豊富にしなくちゃいけない。そこで戯曲とか小説などが映画化されたってことですね。で、映画作品には原作あり、ってのがどんどん増えていった・・・
——人気作品には当然映画化のオファーが来ますよね。
銀子 ファンとしては、自分の思いをつぎ込んだ小説が映画化によって捻じ曲げられはしないかという不安のほうが大きいと思うんです。なかなか許可が出ないものっていうのは作者としてもそうなんでしょう。そういう点で次にお話しするのはちょっと異例だったという映画です。
それにしても、今は携帯電話(スマホ)なしの現代劇はありえなくなりました。
パソコンまではまだそんなに気にならなかったけれど、どうしようもないですね。
——もはや小道具、ではないですもんね。
銀子 時代劇と言えば、ちょんまげ姿の侍が、というくくりですが、今後はスマホや防犯カメラのない時代が新たに時代劇と呼ばれる日が来るのではと思ったりします・・・
——では次回、洋画で。
ロングインタビュー その8
——さあ、ようやく銀子さんが映画をみる時代にたどり着きましたね。
銀子 おまたせいたしました笑 独立独歩。傍らでウンチク語る人もいなくなり笑
でも、さて何を語るかというとまた困りますね。
ユーミン同様、新しいといいますか、ごく最近の作品には疎いので・・
——その点は問題にしません。お好きなものについてお好きなように。
銀子 そうですか、それなら。
——どうでしょう?俳優で?それともよくあるベストテン的なもので?
銀子 好きなものならたくさんあります。ベストテンとかオススメと言われたらまた困ります。わたしは評論家ではなくて、勝手にみたのを、その時どう感じたかを忘れないようにメモするつもりでブログに書いてて。わたしが「あ、これいい!」と思った作品がすべて名作ではもちろんないし、世間の高評価を受けた作品がわたしの五つ星とも限らない。
——映画関連のレビューは読まれますか?プロのものでなくても。
銀子 自分がみたあとで、チェックすることはあります。やっぱり映画好きのみなさんはどう思ったのかと気になって。
——読んでみていかがですか?
銀子 なんてすごい文章力をお持ちなんだ!とひれ伏すこともありますね。このひとたちはどれだけ映画をみてきたんだろうって。わたしもこんなふうに感想をかけたらいいのにって。感動したところでなかなかそれを文章で表現するのって無理ですよ。
表現したところで伝わるかどうかも・・・
でも、ブログのどこかに書いたはずです、“舟を編む”の原作のほうの言葉。あ、映画も好きなんですけどね。
「記憶とは、あいまいなまま眠っていたものを言語化する」
でしたか。
言語化しないと人には伝えられない、自分の中でも眠ったまま。
ただ、今の時代情報があふれかえってる。プロのライターであれ、一介の日記書きであれ、目に入ってくるものにはたぶん左右される。で、自分の考え・思いと混同しそうになる。無理からぬことです。
偉い学者のセンセイでもコピペしてしまうんですから。
わたしが映画の感想を書き記しておく上で、一番気を付けていることです。
——つまり、自分の言葉で、と?
銀子 そうです、短かろうと、拙かろうと、それ、心掛けてます。
ひとのもそう。
カメラワーク云々とか脚本どうこうなど、専門家じゃないから適当なことしかわからないしね。
「あの映画よかったよ」「あの映画が好き」は言えます。でも、それだけじゃ不満。ポイントでいい。どのセリフが心に残ったの?どのシーンが好きなの?音楽はどうだった?あなたのそれが知りたいのよって。
——なるほど。またベストテン話に戻しますが、それは無理ですか?
銀子 好きなもの、ですね。単に好きっていうなら“ジョーズ”“エクソシスト”“エイリアン”も今でも大好きですし、何度でもみてる。それを、例えばですね、自己紹介の「好きな映画」に書いていたらわたしという人間をわかってもらうには疑問ですよね。
——それは意外な作品名です笑
銀子 だからね、ほんと、難しい。好きなもの全部書いてしまうとまた輪郭がぼやけるし。
——ではベストテンやオススメからいったん遠ざかって、これもまたブログのどこかに書かれていましたが、映画化された小説について銀子さんの思いを語るのはいかがでしょう。作品タイトルを羅列するんじゃなくて、「映画と小説」的な。
銀子 あ、それはいいですね。とはいってもそれもまた作品は多いので、そのなかでわたしの好きなものについて。
読んでからみたか、みてから読んだか。どっかで聞いたような笑
——決まりましたね!では次回はそれで。
ロングインタビュー その7
——さてさて、なかなか映画を見る、という方向にたどりつけないんですが
銀子 はあ、まあ、その後も交際した男との映画話になってしまうんですよね笑
——結構です笑 行きましょう!
銀子 高校生時代はそんなふうで。大学生になってから付き合ったひと、まあ、元の夫なわけですけど。これがまた・・映画や音楽なんかには非常にうるさくって、徐々に教育されるっていうのか。
——好きでもないのに押し付けられた?
銀子 問題ですねえ笑
たしかに最初はわけわかんないまま。今となっては子どもたちと集まれば「若いころの父と母」てな感じで笑い話になってるエピソードなんですが・・・学生時代、付き合い始めてまだ間もなかったある日のこと。
「今夜、〇〇テレビの深夜に“野いちご”が放送されるのでみるように」
と。
——“野いちご”・・・それは?
銀子 ベルイマンの、です。もちろんそんな監督名も知らない。わかんないけどみなきゃいけないらしい。まだ録画もできない頃で。仕方がないから真夜中に起きだして眠いのを我慢しつつみた。けれど何がいいのか優れてるのかさっぱりわからない。もう~って感じ。
まだそれはしょうがなかったじゃないの~程度ですが
そのあと、コッポラの“地獄の黙示録”公開です。まだわたしはゴッドファーザーさえみてなかったんです。彼にとってはコッポラやキューブリックは神のような存在で・・・
ところが映画館で上映中わたしは居眠りをした・・・・
——それはまた笑
銀子 弁解がましいですけど、もちろんスターウォーズなんかも行きましたよ。こっちでは寝てません!だけど“地獄の黙示録”ってやっぱり当時のわたしには難解でした。画面は暗いし、で。
「コッポラの映画で居眠りした」と後々までさんざん非難されることに笑
それは映画館での話、だけど結婚後もそんな状況は続きまして。
——居眠り、ですか?
銀子 主婦と言いますか、母業やったことのある女性ならわかっていただけるかと。
昼間家事と子育てに追いまくられ、さて子どもたちは眠ったから映画を、となってもこちらはクタクタ。いくら「これはいい作品なんだから」と言われても・・・ま、彼のいういい作品っていうのは派手なアクションものより淡々と進むようなのが多かった。で、わたしはやっぱりうとうとしてしまってむこうは機嫌が悪くなる笑
——銀子さんにもみてほしい、わかってほしい、同感を得たい、って気持ちが・・・
銀子 その気持ちは今はわかります。わたしだって「ああこれはいい作品だなあ」と思うと誰かに教えたいし、理解してくれる人も欲しいですしね~
——その状況はいつごろまで?銀子さんが自ら作品を選んで鑑賞しはじめたのは?
銀子 うーん、30後半から40くらいになってからかなあ。もちろん自分だけのテレビなんてないので、日中時間が出来てから。
好きな作家やエッセイストが語っている作品を「これはわたしもみなくちゃ」って思い始めて、ですね。そこからはもう自分でレンタルビデオ屋通いです。歴代のアカデミー賞受賞作や、これまでその居眠りをしてしまったものをね。あの頃はたしかみたものを手帳につけていたはず。でもまだこの時代は、あの流し読みだったかも。
——そしてまた気に入ったものを深読み、ですか。
銀子 そうですね。この人面白いと思ったり気に入った俳優がいればその出演作をあさり、監督でつなげたり、脚本家に目が行ったり、と。
——元・夫さんはどんな反応を?
銀子 特になかったと思います、でも内心はしてやったり、だったでしょうね。
音楽(彼は特に洋楽でしたが)。そっちでは理論や知識では太刀打ちできなくても、実技ではわたしが優位でその点は黙らせることもできた。でも映画に関しては完全にわたしは初心者でしたから。まあ、自分でみるようになってからわかりましたが、映画に関して彼の言っていることは間違ってはなかったです。そこらへんは今でも本当に感謝していますよ、素直に笑
夫婦としてはいろいろあって結局別れましたが、いろんなことを教えてくれてありがとうと言いたいです、いや、実際会った時にはちゃんと伝えてます笑
(続く)
ロングインタビュー その6
前回までは音楽、銀子さんにとっての大切な存在であるユーミンについて
語っていいただきました。
今回からは映画についてのお話を伺っていきたいと思います。
◇◇◇
——さて、よろしくお願いします。映画という言葉を含む、映画の感想についてのブログ(日記)はとっても多いんです。どこからいきましょうか。
銀子 これもやっぱり幼少期といいますか、映画というものを映画館でみたという時期からでないと・・・
——そうですね。では最初に行かれたというかみたというか映画館のお話を・・・
銀子 ごくありふれてます。共働き家庭で長らく一人っ子でしたから面倒を見てくれるというか、家にいたのは祖母です。普通ですよ、東映や東宝のゴジラやガメラ。あとは祖母の好みだったのかわからないけど“若大将シリーズ”や舟木一夫の映画笑
——銀子さんがねだって、ではなく?
銀子 ええ、そうなんですが、忘れられない怖いものもありまして。
——怖いもの?
銀子 今でも怖い~“マタンゴ”や“ゴケミドロ”です。なぜそんな映画を?と思っていたんですが“マタンゴ”は最近になって知ったのですよ、若大将と同時上映だったと。ああ、それでわたしはみたんだな、って。特撮ものについてはわたしの年代は円谷プロの申し子みたいなものなので、のちのちテレビでも大好きになっていきます。
——現代の若者といいますか、子どもたちとはずいぶん違いますね。
銀子 普通にジブリ作品のように優れたアニメ映画から入るんですもんねえ。えらい違い。
祖母との映画館はそんな感じで。たまに母が連れて行ってくれるのはディズニーとか・・ディズニーと言っても今みたいなのじゃないですよね。“バンビ”や“わんわん物語” あとはうろ覚えなんですが“白蛇伝”
映画館の入り口でシールをもらった記憶があるんです。大事にしていました。
——そう考えると、今の子どもたちってすごい環境にありますね。映画だけではないですが。
銀子 夏休みお正月春休みに子ども会から行くような映画がメインだったし。なにもかもがすごいですね今は。優れたアニメでも(そうでもなくても)いつだって見られる。特別なものじゃないし。
数年前のことです。ある時、映画館で隣に座っていた小さな男の子が・・何の映画だったか忘れたんですけど上映中に親に「これってCGなんだよね」と言っているのを聞きまして・・・ああ、そういうふうに思うんだと。
ゴジラでもガメラでも、そんなふうに思いながらみることはなかったはずなんです。
セットを作り、カメラを回す人がいて、とはね。一般の子どもはね。
——今はたぶん家庭で大人が話してるからでしょうねえ・・・
銀子 まあ子どものころはそんなふうで。とりたてて語るべきこともないです。
もうちょっと大きくなって、自分で映画館へ行ける年代になっても、わたしはそれほど映画に関心は持てなかった。映画好きの友だちっていうのはいましたよ。そういう子はスクリーンとかロードショーみたいな映画雑誌も買ってたし、たまには付き合って映画館へも行くけれどそれは“ロミオとジュリエット”“ある愛の詩”程度。
別段感動ってこともないし、やっぱり歌のほうがよかったわけです。
——なかなか映画に関心は向いてこないですが・・笑
銀子 もうちょっと時間かかります。映画というものを意識したのは高校生になって、初めてBFが出来たころ。その彼っていうのは中学時代の恩師の影響で、友だちと映画を作っていたんです。
——映画製作とはこれはまた!どんなものですか?
銀子 たかだかあの頃の演劇好きの高校生ふぜいのやることですから。でもああいうひとたちは「まずとにかく映画を撮ろう」って気になるんですかね笑
村上龍の“69”そのまんま。
当時は8ミリでしたね。地元の映画祭みたいなのに参加するとかでなんか悲恋ものみたいなのを。その現場を見に行ったりしたのは、たとえ田舎の高校生でも、作る側に立ってみる、ってことを知ったきっかけだったと思います。
で、吹き替えを頼まれたのが交際のきっかけです。主演した子が吹き替え当日に都合がつかず、時間がなくてわたしが代役を頼まれたんです。
あ、吹き替えじゃないか。映像だけ撮影し終わっていて、音(セリフ)は後から流しながら録る、アフレコっていうのか。間違ってたらすみません。
——高校生のデートというと「映画に行きませんか?」では?
「映画を作りませんか?」とは異色かと。
銀子 そうですね、その彼ともいくつかみた記憶はあります。
——覚えているならタイトルを聞きたいです。
銀子 ブログの中にもぽろぽろとあるはずです。
最初のは忘れもしません、“スティング”と“ペーパームーン”の二本立て。
まあこれはよしとして。
そのあとは~“青春の蹉跌”とか“サンダカン八番娼館”とか、、、わたしにはむずかしいというか「えー?」みたいな・・・そういう小難しいのがお好みだったんですね。
——楽しめる感じではないですね笑 そんな作品を見た後でどんな会話をしていいものやら笑 彼とはその後は?
銀子 高校卒業後東京へ行ってしまったしね。20歳ころに会ったのが最後で、今から10年ほど前のこと、あることがきっかけで所在が知れてメールのやり取りをしたんです。で、その時のメールに「やりたかったことはたいていやったけれど、映画を作ることだけは実現できないままです」と。へえ、そんなことまだ思ってるんだなって。
こんなふうで、なかなか映画を楽しむというか、「映画っていいもんですね!」には縁遠い時代がまだ続きます。
——え~?そうなんですか?
(続きます)
ロングインタビュー その5
——では引き続きいきます。高校生から大学生へ。そして卒業、と・・・
銀子 大人の階段のぼってきましたってところですかね。「君はまだシンデレラさ♪」
——「少女だったと懐かしく振り向く日があるのさ~♪」ですねえ
銀子 全くその通りと言いたいですが、わたしって子どもだったのか老けてたのかよくわかりませんよ・・・
——つられてつい、歌ってしまいました笑 さてユーミン話も限定ラインまで残り少なくなってきてます。いよいよカキョウに入ってまいります。
大学卒業されたのは?
銀子 1981年。その年に何があったかというと、“昨晩お会いしましょう”の一曲目の「タワーサイドメモリー」なんですね。
——ああ、ポートピア!kobe girl とか。これ、モノレールが出てきますが、ポートライナーのことでしょうか。タワーはポートタワー?
銀子 前回、サーファーって歌詞にがっかりしたと言いましたがこれも実は「えー、やめてー」って。恥ずかしいっていうか、こんなことを歌にしないでって。俗っぽいのは勘弁してほしいと思いました。自分にとってたしかに思い出の多い町のはずなのにそれは違うんですね。「そして神戸」はちなみにオッケーです笑
でもでも、ジャケットは好きなほうです。トレンチコートの後ろ姿、かっこいいです。しかも場所はどこなんだろ?なんだか荒地みたいな・・
——そのアルバムの前に一枚ありましたね、“水の中のASIA” 4曲だけの。
銀子 埃っぽいアジアの街へ連れていかれるんですよね~。ユーミンにしては珍しいというか、父とか母とか妹とか日本なんていう言葉が。うん、このアルバムでは通常の「ママ」でなくて「母」ですもん。しみじみします。で、このアルバムは音がいい!そういうの(メカニック?録音技術?)に頓着しない若かったわたしでもそれはハッとしましたっけ。
——ユーミンが自分自身の血を振り返ってるみたいな感じですね。で、そのあと、限定最後の“パールピアス”となります。
銀子 とうとうきました!これはですね、とにかく歌詞カード! 敬愛する故・安西水丸画伯が描かれてて。もうそれでまいってしまいました。ジャケットはきれいなグリーンです。
タイトルである「真珠のピアス」の歌詞はかなりなもんですが、全体的に恋愛モードでも哀しくかつ穏やか。なので好きなアルバムです。
特にラストの「忘れないでね」とか・・・ルルル,と三回鳴らして切ったら・・・忘れないでねBABY BABY。その前の「消息」なんかも。わたしはあなたのグレイのしみになる、とか。
——こうやって見ていくとアルバムの最後の曲はおおかた静かですよね。
銀子 そうなんです。“流線形”だと「12階の恋人」
紙のように舞うわ~なんてズキーンってなりましたよ。
“OLIVE”は「りんごの匂いと風の国」
“時のないホテル”は「水の影」・・・って話してしまうともう決まったようなもんですね笑
——え?それって好きな曲リスト入りでしょうか?
銀子 はい、それらがわたしの選ぶユーミンの好きな曲たちなんです。ま、殿堂入りといいますか、別格で「ひこうき雲」、そのあとはだいたい各アルバムの最後を飾っている曲たちです。これは意識した構成なんでしょうか?余韻をもって終わらせる。
だからシャッフルさせてはダメなんですよね。曲順はそのままで聴かないと。
——「ひこうき雲」は別格なんですね。まあわかるような気もします。
銀子 もうひとつ、どうしても挙げておきたいのは“14番目の月”のラスト曲。
「晩夏」でして。サブタイトルとして「ひとりの季節」あれ?「ひとりの夏」だったかな?
これはもう歌詞が大好きで・・
まあ、検索していただけば全部読めますが、控えめな曲。
悲しくてさみしくて涙がこぼれるだとか、あなたが好きだとか会いたいとか、そういう陳腐なのは一切なくてね。淡々とした言葉から風景・情景が浮かんでくる。実にいいです。
——ユーミンは冬。サザンの夏に対してそんなふうに言われてましたが・・
銀子 それも単にどこかのスキー場の思惑かもしれません笑。 ユーミンが夏、とくにその終わりごろを歌ったものはすごくいいですよ。「晩夏」もそうだし、「9月には帰らない」
「夕涼み」なんかもいいですねえ。
「9月の蝉しぐれ」これは“DAWN PURPLE”収録曲ですが。
おしえて 大人になるっていうのは平気になる心・・・
これって、「水の影」の歌詞、
よどみない浮世の流れ 飛び込めぬ弱させめつつ
けれど傷つく心持ち続けたい
とつながってますよねえ。
響く歌詞です。
夏が行こうとしているときには断然“パールピアス”と“紅雀”です。
——お好きな曲はわかりました。で、好きじゃないのは?どうですか?語りますか?
銀子 うーん。やめときましょうか笑 あるにはあるんですが、まあいいかな~笑
ただ、一曲、ずっと「うーん。なんでこんな曲を」っていうのがありまして・・・
ひとにも言ったことはなくて思ってただけ。それを娘としゃべっているときにぽろっと曲名を口にしたんです。そしたら娘も同じことを思っていた笑 CD聴いててその曲になるととばすっていうんです。同じことしてる!これはおかしかった。
——「ひこうき雲」っていうのはこれですね!
この日のブログに書かれていた曲っていうのは!
銀子 はい、ご明察。もうこれはですね、親しいものたちに公言してます。
以前子どもたちと集まった時、「母と言えばユーミンを聴きながらご飯の支度をしている姿」と言われまして。これが母親としてのわたしのイメージらしい。なので納得でしょうね。
——銀子さんが大切に思っておられる音楽、特にユーミンについてお話を聞いてきましたが、いったんこのあたりでまとめましょうか。語り足りないとは思いますが。
銀子 ありがとうございます。音楽評論でもなんでもないし、ただ自分の半生の記ですよね。でもこんなにまとめて語ったことってたぶん初めてです。おっしゃるとおり、まだまだ細かいことならいくらでもありますが際限ないので・・・
よく言いますよね、無人島へもっていく本とかCDとか。
無人島へもっていくんじゃなくて、もし音楽を奪われてしまうなら、そしていくつかだけは許されるならわたしはこのユーミンの13枚だけで構わないと言えます。
——実にロングでした。でもまだ映画のお話もありますから。
銀子 そうそう。そっちの話もでしたね。ではまたお付き合いよろしくです~
ロングインタビュー その4
——今日はもういきなりお話に入りますね。
アルバムといいますか、期間を限定していただいたのでその間を。
銀子 はい、“ミスリム”の後からですね。
——中学生時代はあの二枚、そして銀子さんは高校生となり・・・
銀子 そうです、高校時代は“コバルトアワー” “14番目の月”
これらもそれぞれ場所があります。
“コバルトアワー”は廊下、“14番目の月”は美術室笑
もう大昔のことなのに、友だちとそれについて語り合った場所が伴ってて
いまだにそれは鮮明で。
——ピアノコピーはどうでしたか?最初の二枚とはずいぶんアレンジや曲想もかわってきていますね?ジャケットもペーター佐藤!
銀子 それまでは格調高いというか、重厚だったんですけどここでガラっと。
音楽的にも違っていましたね。しょっぱな、セスナの音ですから。
これも最後の「アフリカへ行きたい」まで聴いてわかることなんですけどね。
紙ヒコーキからセスナへ笑
曲は・・アコースティックなものもあるけれど、かなりポップで。
わたしは当時はギターを手にしていたし、仲間もでき、といっても男子ばかりでしたが。一人でユーミンのコピーっていうのはとてもとても。なので友だちとギターでやりやすいかぐや姫とかイルカとかアリスとかそんなのを練習してました。
——ユーミンとは距離を置いて?
銀子 距離を置くなんていうのはおこがましいですよ。ずっと聴いてはいましたけど・・・なんていうのか・・・
食事に例えれば、そっちのギターコピーは日常的に毎日普通の家で食べるご飯です。
味も、作り方も、自分にだって作れる。誰だって食べてるし知ってる。
だけどユーミンの音楽っていうのはその頃のわたしにとってはどこか雲の上のようなレストランにあるフランス料理みたいなもので。
——三ッ星レストラン?フランス料理ですか。
銀子 そんな言葉はなかったけど笑 もちろんフランス料理なんて食べたこともないし、想像するだけ、イメージとして、です。
味も知らない、どんなメニューがあるのかも知らない、たとえレシピがあったとしても食材さえ手に入らないから作ろうにも作れないってところ。
——かぐや姫やアリスなら作れますか笑
銀子 ファンの方には叱られそうだけど。歌の内容もまあ、わかる。雲の上じゃない。コード進行なんか真似っこしてそれっぽい曲も作れそう。でもユーミンは違いますね。どんなに無理して模倣して作ってみたところで、それをのせようとしたら家の台所の棚にある煮魚をのせるような地味な皿しかない。
——なるほど。ユーミンの曲(料理)はそいういう皿にはのってませんね確かに。
銀子 結婚がひとつのラインと前回言ったけれど、高校生から大学生になるところでもまたそれとは違いますがまたひとつの線引きがありまして。
——ほほう、それはどういった意味でしょうか?
銀子 大学生となると、私服となり化粧もし、男子は車を手に入れたり煙草を堂々と喫ったり酒も飲む。駆け出しの大人としての恋愛もする。このあたりでそれまでとは違って、いよいよユーミンの曲が身近に迫ってくる、それまでは「大人の歌なんだ」と思っていたものがだんだんわかってくる、と。
——アルバムとしては“紅雀” “流線形80” “OLIVE” “悲しいほどお天気” “時のないホテル”と続きますね。
銀子 ああ~いいですねえ~まさに学生時代!“紅雀”はわたし的にはちょっと異色の一枚なんですけど、“流線形”は当時サーファーなんて言葉があるだけで「おや?」と思ってちょっと落ちました。まあ、後で“SURF&SNOW”も出るわけですけど。まあ、いいんですけど明るくて笑
——軟派なのはお好みじゃないんですか。
銀子 はっきり言えばそうですね、ちょっと悲しかった。ついでに言いますと「恋人がサンタクロース」なんていうのは嫌いな曲リストに入ります。
——嫌いな曲リスト・好きな曲リストについてはまた後日伺う予定ですので。そこはいまは飛ばして・・
ブログに「ダウナーな曲が好き」と書かれていたことがありますよね?全曲通じてそうですか?
銀子 ユーミンに限らず、です。だいたいロックも苦手だし、能天気なポップ系よりはズーンと落ち込むような、いや違う、静かな曲のほうが好みです。なのでデビューアルバムとその次のもののようにピアノ主体で作られた曲に魅力を感じます。
——ユーミンのライブ、以前はコンサートと言ってましたっけ、それに行かれたことは?
銀子 一度だけあります。もう少し後、“昨晩お会いしましょう”発売のころじゃないかなあ、「カンナ8号線」を歌っていたように記憶しているので。
——どうでしたか?それだけ思い入れのあるユーミンを生でみて。
銀子 いやそれがほとんど覚えてません~印象に残らなかったんですね~
——どういうことなんでしょうか?
銀子 普通のコンサートですよ、田舎町だし。よくうわさで聞く(見る)イリュージョンみたいな笑 ど派手なセットもないし。ま、それを期待してもいなかったし。そういうのは好きじゃないし。つまるところわたしはアルバムを聴くほうが好きだっていうことです。舞台というかステージ物は性に合わない。
完成した、完成度の高い、安定したアルバムがあればそれでいいってことなんです。
——では次はその“昨晩お会いしましょう”のあたりを伺います。