「ある日のことでございます」

 

わたしはすでにお布団に潜り込んでいた

 

枕の横に置いたスマホに着信あり

未登録の番号からの電話には出ないことにしている

しかし

その夜は

出た

 

「・・・X(仮)さんですか?」

 

三重県の小さな城下町に住んでいた頃のお話

 

X、それは10年ほど前一時的に使っていたハンドルネーム

ここをのぞいてくれるあなたとあなたもおそらく知らない

その当時の某SNSは盛んで、わたしもすっかり入りびたりで

オフ会だバーベキューだと熱中していた

 

ただその夏に親しい人とちょっとした行き違いがあり

(今でいうSNS疲れ)メインのコミュから離れたくて

別のSNSに登録しそちらに顔を出していたのだった

 

それはほんの一時的逃避で

自分が使っていたXという名さえ忘れ、思い出すこともなかったというのに

 

 

電話をくれた彼とは

そちらのコミュで何度か言葉を交わし

通じるところがあり

近隣だったこともあって食事をする約束をした

 

たぶんわたしはさみしくて暮らしにも迷いを抱えていたのだ

 

おいしい食事の後で(イタリアンだったかな?たぶんワインをいただいた)

カラオケにいきましょ!とわたしは誘い歌いに行った

 

彼(Rさん)は

どういうわけだかその夜のこと、わたしの歌った曲などを忘れずにいて

どうしているだろうかと(彼曰く「ほろ酔い」の勢いで)電話をしてきてくれたのだった・・・

 

こんなことって?

Rさんという名前も顔もすっかり記憶の彼方に流れて行っていたものが

思いがけず

わたしをまた10年前に、そして自分自身を探り返すきっかけとなった

 

 

昨年の同窓会の流れで昔の音楽仲間たちは

「また何かやりたい、やろうよ」

「ボーカルやってな」

という話が出ていて

年明け早々わたしはキーボードを買った

若いころに投げ出したピアノをもう一度練習しよう

仲間たちとの来るべき日のためにと

 

 

そこへきてRさんからの驚きの電話

 

これはやっぱり

「おまえは歌っていればよい」という啓示だと受け止めておこう

 

Rさんは

来週遠路はるばる訪ねてきてくれることになった

 

 

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