桜話2

 

 『枝垂桜と項垂桜

 

 

わたしはいったいどこへ行こうとしているのでしょう

 

 

大きな枝垂桜の下に立ってたずねてみました
もちろん木は答えてくれる筈もありません
ああやっぱり、と
わたしもその枝のように項垂れてしまうのです

 

この半年あまりというもの
自分の気持ちが自分でも掴めなくて
毎日のように泣いて暮らしておるのです

答えていただけなくとも
わたしは問い、語り続けます
ただ
告解のように

 

 

始まりは暑い暑い夏でした

手に負えなくなったわが身

そのなすすべも知らず
朝顔の蔓のよう、
誰彼なく触れたものに
手当たり次第に巻付いてみたのです

やがて秋が来て
異常なほどに熟して色づいた実は
地面に落ち醜く潰れ

雪景色の中
意識をなくした冬枯れの枝は
これ以上はないというくらい
わたしの生き様に似合っておりました

 

 

 

 

そして春

これほどわたしにそぐわない季節はありません
新芽新緑は新風に吹かれ
何もかもが意気上がる中
唯一項垂れている木を見つけ駆け寄って
訊いてみたのです

「わたしはいったいどこへ行こうとしているのでしょう」

その枝垂桜は
風に縺れたその枝をえいやと揺らし
それどころではないよと言わんばかりに
わたしに一瞥をくれただけなのでありました

 



・fin・