桜話2
『枝垂桜と項垂桜』
わたしはいったいどこへ行こうとしているのでしょう
◇
大きな枝垂桜の下に立ってたずねてみました
もちろん木は答えてくれる筈もありません
ああやっぱり、と
わたしもその枝のように項垂れてしまうのです
この半年あまりというもの
自分の気持ちが自分でも掴めなくて
毎日のように泣いて暮らしておるのです
答えていただけなくとも
わたしは問い、語り続けます
ただ
告解のように
◇
始まりは暑い暑い夏でした
手に負えなくなったわが身
そのなすすべも知らず
朝顔の蔓のよう、
誰彼なく触れたものに
手当たり次第に巻付いてみたのです
やがて秋が来て
異常なほどに熟して色づいた実は
地面に落ち醜く潰れ
雪景色の中
意識をなくした冬枯れの枝は
これ以上はないというくらい
わたしの生き様に似合っておりました
◇
そして春
これほどわたしにそぐわない季節はありません
新芽新緑は新風に吹かれ
何もかもが意気上がる中
唯一項垂れている木を見つけ駆け寄って
訊いてみたのです
「わたしはいったいどこへ行こうとしているのでしょう」
その枝垂桜は
風に縺れたその枝をえいやと揺らし
それどころではないよと言わんばかりに
わたしに一瞥をくれただけなのでありました
・fin・