最終便

『わたしが・棄てた・女 (遠藤周作)』  2002年2月11日




「僕らの人生をたった一度でも横切るものは
そこに消すことの出来ぬ痕跡を残すということなのか」



主人公のこういう独白がある
人生を横切っていくもの、それに心を動かされ
乱されていることのなんと多いことだろう
横切ったり横切られたりの繰り返し


ほかのものに気を取られていて見過ごすこともあるだろう
しかしその一瞬、目を留めてしまったら最後



あの日、あの場所に行っていれば
あの日、あの場所に行かなければ
小さな偶然の積み重ねとすれ違いで
人生は成り立っている


痕跡が残っていることを
この小説の主人公のように寂しさと感じるかどうかは
その程度にもよるし、ひとそれぞれでわからない
自分に残された痕跡を思う時
一時は確かに痛みのようなものを感じるときもあった
でも今は・・・かえっていとおしい



私もまた誰かの人生を横切り
痕跡を残しているのだと思うと
妙な気がするけれど