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邪な蛇


『EXORCIST』 2002年2月9日


憑き物を落とすために熱いシャワーを浴びている
浴槽の底にへたり込んで
頭のてっぺんから音を立てて湯を受けていると
こびりついたものもふやけて剥がれやすくなるだろう

に・まる・まる・いち 
に・まる・まる・いち
あとわずか

私の内面に巣食っていたモノは
この年、初夏に命を与えられ
中年以外の何者でもないこの身体を覆い尽くした

あるべき場所を見失い
「飼い主」の意思など無視し続ける

さあ来い、来て見ろよ、と
それに馬乗りになって叫び続けたカラス神父のように
窓に自ら飛び込み
冷たい急な石段を転げ落ちでもすれば
それは終息するのだろうか








『邪なるもの』 2002年5月25日
 

邪ってなんだろう
邪念邪推邪悪

振り払っても追い払っても
弱みにつけこんで入り込む
でも自分で呼び込んでいるんです、ほんとうは

一旦扉をあければほんのすこしの隙間から
「邪」は忍び込むのです
よこしまなものたち
弱みに付け込む
それが「邪」なのです
入り込んだが最後
部屋じゅう引っ掻き回していくのです
自分が呼び込んだとはいえ
収拾のつかなくなった部屋の真ん中で
さらに酷い精神状態で
結局はひとりでそれを片付けなければならないのです






『蛇の道』 2002年9月1日


彼はブルーのシャツを着て
手すりにもたれて私を待っていた

私が恐る恐る小声でその名を呼ぶと
上半身をこちらに向けて
にっこりと微笑んだ

初対面でもなんでも
人を好きになることにわけなどない
絵でもそうだ
それが高名な芸術家の作品であろうが
街角に立っている画学生のスケッチであろうが
自分の目で見て
「ああ、これが好きだ」
そう思う以外に何が必要だというのか


何かが欠けた人間と言うのは
どうしてこんなにもさみしいのか
お互い笑顔を向けていながら
身体の見えない部分が声をあげて泣いている
欠けたところを埋めあうために
あっという間に陥る擬似恋愛


「また会いたくなったらどうしよう」
「会いにくるよ」
「そんなこと言うと、本気にするよ 私はバカだから」
「・・・・すればいい」
「!」

自分より何年もあとに生まれた男に
あっさりと一本とられる快感を私は知った
いとしさがこみ上げて
自分のものにしたくなる



恋など
拾う気さえあれば
文字通り道端にも落ちている
興味を持たず見過ごすか
見ても手を出さずにいるか、だ
ただその道は
蛇の道なのかもしれない
手も足も失って
傷だらけになるのは覚悟の上だ