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もうひとつ、春


2003年 たぶん春 日付不明

『浮遊』




慣れないヘルメットを
ぎこちなく脇に抱き
バイクのそばに突っ立つ
台詞を度忘れした役者のように
これ、私?そう、私

おなじように
ヘルメットでその表情が見えないあなたが
そんな私を振り返り誘う
ほら
ここに乗るんだよと言っている



肩越しに
恐る恐る覗くバックミラー
段差で
下り坂で
カーブで
私たちは浮遊するね



脚を開いて
堂々とあなたにしがみついても
誰もとがめない
いぶかしがることも
眉をひそめることもない


もう私は
バイクの排気と
エンジンの唸りと
信号待ちで何気なく私の腿に置かれるその手に
あの世とこの世を行ったり来たり

どうするのよ春から