う、に濁点

少し前

「ヴ」という表記をやめるとかやめないとか

そういう記事を読んだ

 

自分がどのように

ブとヴを使い分けているか考えてみる

当然「V」の時は「ヴ」かと思いきや

そうでもないことに気が付く

 

だっていちいち

ラヴなんて書かないし

バレンタインであってヴァレンタインじゃないし

ヴ、ってなに気取ってやがるって感じもする

 

ケビン・コスナー

ケビン・ベーコン

ケビン・スペイシー

でも

ヴァレンチノでありルイ・ヴィトンなんだよね

これは国籍(?)によるのかな

 

今、熱心に見ているドラマは

北欧のものでタイトルが『捜査官エヴァ

そういや

エバンゲリオンなんて書いてしまうと

垢ぬけてなく平坦でつまらなさそう

 

でも

大昔・・・ゴールデンハーフにいた彼女は

エヴァじゃなくてエバだったよ

うん

彼女は間違いなく

エヴァ」って雰囲気じゃなかった

ミス

昨夜のこと

 

友だち(女)からメール

(実際はLINEだけれど面倒なので、メールとする)

 

最近とある集まりに関して

なんどかやり取りがあったので

特に不思議でもなかった

内容がどうも変だ

 

ああ

これは宛先を間違えたなと気が付いたので

その旨返信しておいた

 

「ごめんなさい!お騒がせしました!」

だと笑

結構絵文字も含め長文だったが

内容はつまり明日ランチに行こうという程度のこと

 

まあよかったよね

 

以前

友だち(男・既婚)から突然に

「〇時頃には帰る」

というメールをもらったことがあった

おそらくは出先から奥様に向けてのものを

わたしに送ってしまったようだ

 

これはけっこうウケた

 

彼とはめったにメールなどしない

思うに

LINEの場合

トークした相手は上がってきているから

長らくやり取りのないわたしと送り先を間違うってことは

その直前にたぶん過去のものを見ていたのだろう

そんな想像をしてぷぷっと笑ったし

そっけない文面(まあ当然だろうね)にも

 

昨夜の一件も

どうってことのない内容で

相手の名前も文面に入っていなかったから(コレ重要)問題はないけど

 

わたしの場合

呑み会帰りは要注意だ

相手も内容も

日ごろ理性で抑えていることがむき出しになり

ええい、と送信してしまうことがある

送り先を間違えてなくても

翌日の後悔はある

 

気をつけなくてはね

 

 

 

 

昭和の事件ファイル

先週は市議選

 

高校時代の同級生が立候補しているので

数日手伝いをした

 

選挙事務所はちょっとした同窓会会場のようだった

 

昔の話をすると

「よくそんなことを覚えているなあ」と

感心される

もうひとり

選挙の世話役をしている幼馴染のМくんもわたしと同類だ

彼とは高校も同じだが

小学生のころからの付き合いで

いろんな出来事を共有している

彼に言わせると

「いやいや おまえ(つまりわたし)のほうが

細かいことまでよく覚えてるって」

 

わたしに言わせれば

“覚えていない”みんなのほうが不思議で

 

ねえ、ふたりで幼いころからの事件のファイルを作ろうか

などと笑いながら話した

 

 

校舎・校庭のあの場所でこういうことがあった

あの子が学級会でこんな発言をした

先生があそこにつれていってくれた

あんな実験をした

 

などなど

 

 

数年前

やはり同じような集まりがあり

そのとき彼はわたしに

「おれ、高校時代はあまりおまえと話をしなかっただろう?」

同じクラスになったこともあったのに

 

「あの頃はおまえのことが怖かったんだ」

 

そう言った

ふーん、と流してしまい

その発言については以後触れずに来た

 

来月あたりふたりでご飯を食べようと約束した

怖かったとは?

わたしのなにが怖かったのか

 

感受性の似た彼から見て

あの頃のわたしはどう怖かったのか

 

今度はそこらへんについて

忌憚のないコメントを聞きたいと思っている

 

黒ビール

少し前に

英国テレビドラマのことを書いた

 

はまるきっかけは

それ以前に放映されていたこっちのドラマだった

 

刑事モース

オックスフォード事件簿

 

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今また流れているので

最初から見直している

 

主人公のモースは

線が細くて見ていても心配になるほど

時代は1960年代らしく

(イギリスだからかはわからないが)

登場するファッションや車や風景が

美しいし楽しい

 

特にメガネ

登場する人物がかけているクラシックなそれらが良くって

メガネが映るたびにわたしは

「あ、それほしい!」と心の中でさけんでいる

 

あと脇役

 

警察医というのか

被害者を解剖したりするひと

ややぽっちゃりの彼は

これまたメガネでたいていダッフルコートを着ていて

モースとの会話が気が利いていて好きだ

 

新聞記者でモースと情報交換をする女性

彼女は決して若くはないが

知的で仕事熱心な姿がいい

 

モースのアパートの部屋のはす向かいに住む

看護師の黒人女性

とてもキュート

 

古く善き時代か

勤務中にもパブで黒ビールを飲む

登場人物たち

それがとても美味しそうである

 

録画したものを

帰宅後みるのが楽しみな毎日

 

 

さくら寿司に蓮根

今週のお題「桜」

 

 

『さくら寿司に蓮根』

 

 

窓の外には
春の日差しが満ち溢れ
近所で始まった、家を新築する大工仕事の
威勢のいい音が聞こえてきます


植物の色はといえば
黄と緑にほぼ統一されているし
真新しい制服姿の学生が
自転車をこぎ裏道を走り
買い物に出かければ
新しい店員の緊張気味の接客


そのような午後、
わたしは薄暗い台所で
蓮根の泥を落とし洗い皮を剥き
さくっさくっと包丁を振るうのです

 

 

くら寿司には
あでやかでいろどりよい材料が欠かせません
お重のふたを開けたとき
うわあと声を漏らすほどの


だけども
そこに混ざっている蓮根は
ちょっと異質で
仕上がりまでの過程が一興なのです

 

 

泥に塗れたままパックされた蓮根は
不精な中年の無駄毛処理を思わせます

ところどころに隠し切れない傷もあり
泥が入り込んで洗っても取れません


手に取り、
しばらく見つめて息を込め、
節でぱっきりと折ってやれば
彼らはがくっとこと切れます



穴からはつつうと体液のように
薄い泥水が流れ落ち
わたしの手にかかります
またそれを少しの間味わってやるのです

取れない泥は
包丁の角を使ってこそげ取るのですが
縦の繊維が強いのでスムーズにはいきません

手強いです

 

やがて薄く輪切りにされて
水に放たれた蓮根は
見違えるように愛らしく白く


でも、生のまま噛んでやると
微かにレジスタンスの味がします

これはやっぱり若者にはない
泥に一度浸かったことのある中年の味なのです


・fin・

桜話2

 

 『枝垂桜と項垂桜

 

 

わたしはいったいどこへ行こうとしているのでしょう

 

 

大きな枝垂桜の下に立ってたずねてみました
もちろん木は答えてくれる筈もありません
ああやっぱり、と
わたしもその枝のように項垂れてしまうのです

 

この半年あまりというもの
自分の気持ちが自分でも掴めなくて
毎日のように泣いて暮らしておるのです

答えていただけなくとも
わたしは問い、語り続けます
ただ
告解のように

 

 

始まりは暑い暑い夏でした

手に負えなくなったわが身

そのなすすべも知らず
朝顔の蔓のよう、
誰彼なく触れたものに
手当たり次第に巻付いてみたのです

やがて秋が来て
異常なほどに熟して色づいた実は
地面に落ち醜く潰れ

雪景色の中
意識をなくした冬枯れの枝は
これ以上はないというくらい
わたしの生き様に似合っておりました

 

 

 

 

そして春

これほどわたしにそぐわない季節はありません
新芽新緑は新風に吹かれ
何もかもが意気上がる中
唯一項垂れている木を見つけ駆け寄って
訊いてみたのです

「わたしはいったいどこへ行こうとしているのでしょう」

その枝垂桜は
風に縺れたその枝をえいやと揺らし
それどころではないよと言わんばかりに
わたしに一瞥をくれただけなのでありました

 



・fin・

 

 

 

 

桜話

その樹には

女よりも男のほうが似合うと思う

 

 

 

『古木(こぼく)のようなひと』

 

これ、

一応は内緒の話ですよ

 

吉野は
同じバレー部の薄墨先輩のことが好きだったんです

ええそうです、
先輩は男です

知りませんか?この話
同級生の間では有名な話なんですけど

 

 

当時、吉野には恋人もいたんです
同級生の大島さんといって、
これがまたかわいい人で

絵になる二人でね
彼は男前でしたし
末永く仲良く続いていく二人・・・
としか見えなかったですよ

吉野本人にしたって
自分がまさか
同性に惹かれていくことになるなんて
思ってもみなかったと思いますよ

 

 

 

 

その薄墨先輩っていう人は
とりたてて美男ってわけではないけど
不思議な魅力があったんです

隠れた人気はありましたね、
男子にも女子にも

成績は上位で口数は少なくって
身体は大柄でがっしりしてて

よく学年にひとりふたりいるような
生徒会長タイプではなくて
かといって
不良っぽくてカッコいいのとも違う

まあ、バレー部の部長ではあったんですが
事実上は他の部員がリーダーシップをとっていて
彼はもうひとつ上に鎮座してる、
そういった趣がありましたね

 

そう、
どっしりしていて
見ていても安心できる

山里にある「古木」みたいな

 

 

何がきっかけでそうなったのか
それは誰にもわからない

いきなり強い風が吹いて
開ききっていない花を
ざっと散らしていったような感じでしたね

でも、
3年生が夏に引退して
薄墨先輩のあと
吉野が部長をやることになって
個人的にいろいろと親しくしていたのは
みんな知っていたんです

思えばそれからでしょうか

 

 

 

あの年
年内に薄墨先輩の大学への推薦合格が決まって
この街を離れることが決定的になった時
吉野は
隠していた自分の気持ちを
それ以上押さえていることが出来なくなったんじゃないかと
僕らは推測しているんですがね

よほど辛かったんでしょう

彼がそんな気持ちでいたなんて
誰一人気づいてなかったって言っていました

真面目なヤツであるがゆえ、
いやいや、不真面目であっても
まだまだ同性に恋心を抱く自分を
すんなり認める人間は多くないでしょう

ましてや先輩に打ち明ける勇気もなく


僕だって未だに信じられないですよ
死にたくなるほど
同性に恋焦がれるなんて

あいつなら
女友達にだって不自由しなかったろうに

 

 

 

 

先輩の姿を眺めたり
その声を聞いたり
自分に笑顔が向けられる時
胸が痛くなる

これが異性に対するものだったなら
たとえ結ばれなくても
ごくありふれた片想いで済んだのに

相手が同性であったばかりに
吉野はあのように逝ってしまった


三月の末、
まだ寒い頃でした
僕らの高校が遠くに見える
お城の公園の林の中で
吉野は自分の人生を
自分で終わらせてしまったんです

 

 

 

 

あの年は冬が長くって
今のように桜は咲いていませんでした

咲いていなくて、
かえって良かったかもしれませんね
だって、あまりにも絵になりすぎるでしょう?
花のもとにて春死なん、でしたっけ

桜の花びらの上に
かなわぬ恋心を抱いたまま
命を絶って横たわるなんて
あまりにもひどすぎますよ



この季節になると
みんな嫌でも思い出すって言ってます

あんな恋もあるんですねえ

やっぱり僕には分からないですけど


・fin・